ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は

■基本は個々の関係づくり
■怒られ慣れていない若い人には
■「厳しいけれど、冷たくない会社」
■マニュアルにないサービスを―お客様の声を励みに


インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)


(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は

■基本は個々の関係づくり


正田:最後のご質問になってしまいました。ゆとり世代と言われるここ数年入社組の新入社員、厳密にはここ2年ですか3年ですか、「承認」はどのように効果を及ぼしていますでしょうか。これは一般的に交通・運輸に限らない他社様で、どこでも頭が痛いっておっしゃる問題なんですが、いかがでしょう。


水田:あまりゆとり世代という方々の特徴という風にはとらえていないですし、明確にこの2−3年の傾向として、それまでと大きく違ってきているというふうには受け止めてはいないです。

それぞれ自分が何を求められ、どういうステージにいるかというところで、例えば、入社して、新しい仕事をおぼえるということもそうですし、何年か経って国際線の資格をとって、さらに業務領域を拡大したり、あるいは、先程申し上げたようなチーフパーサー、責任者となっていくときには、責任の重みが増すですとか、そういう1つ1つのステップの中でのプレッシャーなり、責任の重さみたいなものに対して多少大変だと思うような人達が出てくることはあるかもしれません。

そういう時に、1人1人に対して個々の関係を管理職層がつくり、悩んでいる人に対してのアプローチをすることによって、周りがサポートしながら、いい状態に持っていこうという、そういうことは日々のマネジメントの中でやっています。

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正田:それはそれは。すごいことですねー。


■怒られ慣れていない若い人には


水田:ただ、(若い人は)資質としては、すごく優しかったり、ナイーブだったりします。


正田:彼(撮影スタッフ・田村)も優しいんですが(笑)


水田:大切に育てられていて、怒られ慣れていない、そういう傾向は、この何年かの中には感じるということはございます。そういう人達に対して、昔風の、それこそ上から下に「何やってるの!」というようなことをやってしまいますと、ヘナヘナヘナと…(笑)


河本:折れちゃう。


水田:そういうことに対して、気は使っております(笑)。


正田:大変興味深いので教えてください。例えば水田様が入社された当初のころは、ミスした時にはどんな風に怒られましたか。


水田:それは、まずこう、(強い口調で)「あなた何やってるの?」という感じですね。


正田:はあ、今のような口調で。


河本:こんこんと。


水田:はい、お説教されるような感じで。


正田:ではもし、今の新人さんが同じようなミスされるとどんな感じですか。


水田:「(穏やかに)どうしてそういう風なことになったのかなあ」「少し振り返ってみましょうかー」みたいな感じでしょうか。(一同笑)


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正田:そうですかあ(笑)


水田:それで、自分の中に「ここが間違っていたのか」と考えさせていくような感じです。やっぱり怒られることになった結果がありますから、どこかが違っていたということだと思うんですね。そこに対して、本人に気づかせるということです。


河本:だからと言って、今、全部が「どうしたの?」というわけではありません。ティーチングとコーチングを使い分けるようにしていますし、憶えるべきことを憶えてもらわなければ困るという意味では、かなりスパルタ的にティーチングでやっているところはあります。また、それだけではないマネジメントというものも考えて人を育成していくということを推進しています。すべてがそんな風(「どうしたの?」)ではないですし、「こっちかこっち」ではなくて、使い分けですね。

 成長の段階によって、そしてまた個人差もありますので、1人ずつをきちんと見て行くということをやっていかなければならないと思っています。

 やっぱり「人」なので。「ANAはこうだ」ということよりも、1人1人が集まってANAになっていくということですので、1人1人がブランドの代表として、1人1人が自分を律して、行動をとってくれる人に育ってほしいという思いをこめています。

 厳しく「何やってるの!」から、「(優しく)何があったの?どうしたの?」(笑)という、そこを見ていくという、両方ですね。


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正田:そのスパルタの場面もぜひ拝見させていただきたい(一同笑)


■「厳しいけれど、冷たくない会社」


河本:やはり訓練の場面などは厳しいですね。パイロットもそうですし、整備もそうですけれども、先輩が後輩に対して、やるべきことをきちっとやっていないと、そこはやはり厳しいですね。ベースには安全というものがありますし、これも色んなところでよく言うのですが、私たちは「厳しいけれど、冷たくない会社にしよう」と、先輩に言われたことがあります。


正田:厳しいけれど、冷たくない会社。


河本:やはり厳しさは必要ですし、ただ、人としてはつねに血が通ってるというか、何のためにそれを言っているのかというと、自分の成長、会社が永続的に発展するために自分の先輩は今これを自分に伝えてくれているんだ、ということを感じられる、そういう育成をしていきたいなと思います。


正田:素晴らしいです。


水田:そこを感じてくれている人はいますね。色んな厳しいことを言ったかもしれないけれど、あの先輩は自分のことをちゃんと考えて、自分のために言ってくれているということが伝われば、しっかりそれを受け止められるんだと思います。感情的に自分のものをぶつけるようなことを言わないようにしないといけないですよね。


河本:だからと言って、感情がなかったら、それはそれで無味乾燥ですよね。やっぱりはらが立つときははらが立つし、嬉しいときは笑うし、悲しいときは泣くし、苦しくても泣くし。やっぱりそういうふうにみんなが活き活きと働ける職場でありたいと思います。

 先程グッドジョブカードのお話が出ましたけれども、この表彰式を3か月に1回ぐらい実施します。そのときには、本当にみんなが「この仕事をやっていて良かった」「ANAでこんなお客様に会えたことが幸せだ」ということとともに、「この賞をもらえたのは、今まで支えてくれた人がいるからです」「私がフライトでこのことができたのは、そのとき周りに仲間がいたからです」ということを、べつに強制して言わせているわけではないんですが、本当にみんながそういうコメントを表彰式のときにしてくれるんです。それは私にとっても、いいなと思う場面ですので、そういう意味でお互い認め合って、これからもどんどんいい方向に使っていきたいなと思っています。

 先ほどから「素晴らしいですね」というお言葉を何度も発してくださっているんですけれども(笑)、中身はそんなに素晴らしいことばかりではなく、つまずいていることも一杯あります。完璧ではないんですけれども、それをずっと続けるということを地道にやっていきたいと思っています。その積み重ねが、あとで振り返ったときに「ああ、こういうことだったなあ」となればいいと思います。


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正田:もう気持ちの中に素晴らしいっていうのが充満してしまっていまして、本当にありがとうございます。本当に貴重なお話を。

 よろしければ田村さんからも一言。


■マニュアルにないサービスを―お客様の声を励みに


田村:先日、6月末に伊丹から羽田に「ポケモンジェット」に乗らせていただいたんです。最後尾に座っていてポケモンの絵のついたカバーの写真を撮らせていただいておりましたら、客室乗務員の方がポストカードをお渡しくださいました。それはポケモンジェットにしか載ってないポストカードだったんです。知人の子どもにすごいポケモン好きがおりましたので、そのポストカードを上げると「あっ(喜)」と。


河本:嬉しいです、そういうこと(ポケモンジェットのポストカードのプレゼント)が行われているということが。それはマニュアルにはないけれども、そのときに、(シートカバーを)見ていらっしゃる姿に寄り添うことができれば、ということで、客室乗務員が判断したのだと思います。私たちはマニュアルにない、その時にできる、あなたらしい最高のサービスをしてほしいということをいつも伝えていますので、今のようなフィードバックで、「ああ、実践されているんだな」と思います。そういうお客様の声が私たちの宝物で、そういった宝物があるから、次のANAがあるのです。ありがとうございます。またそういうお話を伝えていきたいと思います。

 本当にそれが何よりのモチベーションで、「なんでそんなに頑張れるんですか?」と聞かれた時に、そうやってお客様が「ありがとう」と言ってくださったり、温かい言葉をかけてもらえることが、私たちの励みだと思っています。


正田:ありがとうございます。今日のお話でも6000人のアテンダントの方がいらっしゃるんだということ、こんなに軍隊的な組織というのは(笑)その中のマネジメントをここまで血の通ったものにしておられるのが、日々のご努力が凄いことだなあと思っておききしておりました。6000人の方々が血の通った、心のこもったサービスをされるために、マネジメントの皆様本当に汗を流しておられると思います。ご苦労様でございます。


河本:いえいえ、応援して頂ければ(笑)。こんどは、逆に厳しいご意見なども、いつでも頂ければ。

繰り返しになりますけれども、本当に行き届かないですし、今日こうしたことをお話させていただくのも、決して「私たちはできているから」ということではなく、「こんな取り組みをしている」というご紹介の気持ちですので、そのように受け止めていただければなと思っております。何卒よろしくお願いいたします。


正田:また今後を楽しみにさせていただきます。応援しております。今日は本当にありがとうございました。



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(エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ につづく)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて

あとがき・石切にて




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