第30回よのなかカフェ 「丸わかりユーロ危機!今年こそ知りたい金融の話」。

BlogPaint



関西国際大学准教授・松本茂樹氏がゲストスピーカー。
会社員、元銀行マン・学長経験者、高校生、といった方々が集まりました。


「あす(6日)から9日までが山場ですね。イタリアがちゃんとするかどうか。可能性としては何が何でも抑え込むんではないでしょうか」(松本氏)


と、不穏な第一声から始まりました。


3962



当協会では「トップ支店長」として知られる松本氏は地銀の銀行マンとして神戸・兵庫・東京を舞台に活躍。「インドのムンバイでは『神戸のマツモト』として有名でした」。

あるとき、エリツィンの名前でロシアからFAXが送られてきた。

「デフォルトをするというFAXだった。 国がお金を払わないということもあり得るんです。それが今日のお話につながります」


ここから、EU・ユーロの歴史・現在について、松本氏より解説。
本当はスライド28枚の大部の資料を追いながらのお話でここでご紹介するよりはるかに手厚いものです。一部しかご紹介できないことをお許しください。


「ドイツ首相のメルケルが去年10月27日、「第二次世界大戦後の欧州で最も大きな危機」と言いました。ドイツにとっては、にどと戦争をしないためのヨーロッパ統合だった」

EU統合は19世紀の普仏戦争以来、100数十年の戦争の歴史を踏まえたヨーロッパの悲願でした。半世紀かけて金融・通貨・為替を共通にし、経済面の財政と政治面は別々の統合になった。





そのなかで覇権は世界恐慌を境にイギリスからアメリカに移り、そして今アメリカから中国に移ろうとしている、と松本氏。


「リ・オリエント。時代はアジアに写ってきている。19C始め頃、中国とインドで世界のGDPの半分を占めていた」 

そしていま、
「ヨーロッパ統合の逆回転。あすメルケルがイタリアの新首相をベルリンによびつける。 それをふまえて9日にメルケルとサルコジが会談。ものすごい危機の今日は前夜です」


「ドイツ人は日本人と似て生真面目、勤勉。しかしナチスが出てくる背景になったハイパーインフレを絶対避けたいという思いがあり戦後、均衡財政をやってきた。腹の底ではギリシャなんか救いたくない」


「メルケルがギリシャを救おうとしたら支持率が下がる。2012年はアメリカ、ロシア、韓国、中国のトップが替わる。選挙に勝ために自国民のための政策をとる。だから非常に危うい。」


「(スライドを見ながら)現在のユーロ分布図。イギリスはポンド危機のため入っていない。入らなくて良かったな」


「ドイツとほかの国は違う。ライン川以西とアルプス南部の国々の人々の20世紀はまったく違う」

3840



「(スライド解説)為替の推移。ユーロに対してもドルに対しても円が高くなっている。これまではユーロに対しては安かった。今回の円高は日本のトヨタなどにとっては深刻。」


「(同)フランス、ドイツ、イギリスはイタリア、スペインにすごい融資をしているので必死。」


日本にとっては?という問いに。


「民主党の一体改革大綱。消費税引き上げをやらないと格付け機関が日本国債をまた引き下げる。 そうなったらもう終わり(財政破綻)。今政権交代を狙って自民党がゴチャゴチャ言っているが今回の消費税は絶対にやらないと日本は終わりになる。」



 …とここまで、 駆け足20分での解説でした。


 ここから参加者の自己紹介。

3800



「大学客員教授。銀行員、銀行シンクタンクを経て大学で役職を経験し引退して現職。正田さんから強引に引っ張られてきた。年齢制限はないかときいたら『若い人を押さえつける人でなければ歓迎』と言われた


「女性会社員。会社に正田さんのメルマガがずっと来ていていつかよのなかカフェに来たいと思ってきた。ニュースをみても今ひとつわからないので今日は来てよかった」


「スタッフ山口氏、フリーライター。今日はユーロ統合の歴史を含め解説して頂き良かった。我々は時限爆弾を抱えているようなもの」


「女性会社員。税理士試験を受けている。2014年から消費税率8%になるということなので、税率が変わると色々変わってしまうな。それまでに受からないと…。」


・・・などなど。


このあとはフリーディスカッション。「90秒ルール」などのご説明の後、


「今大変にホットな話題で、予言的な話をするのもどうかと思うが、EU統合は非常に性善説的なものだったのではないでしょうか。政治は別で経済は一緒、というのはそういうことだったのではありませんか」


「(松本氏)そうでしょうね。ドイツはギリシャ等を切り離したい。EUの国を増やし過ぎて、6か国7か国でやっていればよかったが格差が大きすぎてコントロールが利かない。幕内力士であるドイツ、フランスが格下の中ですもうをとって独り勝ちしてる。 行司がいない。柔道でも体重制がありますからランクは必要なのかなという気がしますが。」


「EUが理想郷化していたときには次はアジアだ、と言われていたが。ちっともそういう言葉が出なくなりましたね。」


「(松本氏)そうですね。逆スパイラルになると矛盾が全部出てくる。いっときは大成功したように言われていましたが。
今はドイツがものすごく好景気。輸出がしやすくなって、トルコやイタリアの安い労働力を手に入れることができて。 中国は実質3%とか4%の成長率だがドイツはそれを上回る。 だから上手くいっていれば良かったが  解体の方向に行かざるを得ないのでは」


「PIIGS(※)の国は大なり小なりギリシャのように粉飾決算のようなことがあるんでしょうか?」

※PIIGS:ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの”問題児5か国”をよぶ。

「あるでしょうね。」


「そうなるとまた地域通貨のようなものを作って為替的なものを入れ込まないとにっちもさっちもいかないのでは?あなた方の成績が悪いから足切りですと言われるとギリシャとしては困るのでは。」


「(松本氏)ドラクマ(ギリシャの元の通貨)とかに戻ったら誰もその通貨を使わないのでは。 どこかアフリカの国がハイパーインフレになって通貨をドルに替えたら治ったという話がある。ギリシャでもユーロをそういう目的で使わせてもらうのかなと」


「われわれはどういう感覚でいたらいいんでしょう?静観するしかないんでしょうか。」


「(松本氏)日本人は選挙に行かないじゃないですか。自分たちの国を何とかしようと思っていない人がほとんどで、それを橋下さんが若者を組織してああいう勝ち方をした。若者が変わって、一生懸命国を良くする政治家を選べばいいのでは」


BlogPaint



佳境に入ってきました。ここでフリーライター山口氏から問い。


「デフォルトになると国はどうなるんですか。」


「(松本氏)たとえば夕張が破たんすると公共サービスをどんどん縮小しましたよね。弁護士がお金をコントロールする。会社が破産したら管財人がきて全部管理しますよね。韓国はIMF管理になったら企業をどんどん合併させて立ち直って今元気ですよね。」

3951



正田も問い。


「韓国の立ち直りの速さは驚異的でしたが、サムスンなど一部の大企業を除いて正社員になるライフコースが狭まってしまっている。それはIMF管理のせいなんですか」


「(松本氏)そうです。国が残す企業、残さない企業を決めた。だから少女時代とかKARAとかああいうのみな国策でやってますよね」


「そうすると子供たちの代にとっては決して幸せな社会ではないなあと。」


「物質的に恵まれているのが幸せなんじゃなくて。昭和30年代のAlwaysの時代。  」


「ブータンですか?一番幸せなのは。いいタイミングであの国王と王妃来ましたね。」


「就職率が低くなって若者にしわ寄せがくると希望のない社会になりますね」


「ただ雇用はミスマッチで、今でも中小企業に来てくれないと言っていますから。スティーブ・ジョブスのような若者がなぜ日本で生まれないのか。例えばトヨタに努めていると日本でははーっと言われる。それより本当にやりたい仕事をやれているかが大事なんですけど」


「やりたい仕事をやれているかというと私自身どうかなと。ホンマに私自身これをやりたくてやったのかなと。今介護の仕事は多いけれど資格をとらなきゃいけない。興味があるが労働条件が厳しい。夜勤もあったり。
子どもは親を見ているじゃないですか。もうちょっと私自身が自信をもって仕事している姿を見せられたらいいんだけど。
今までなるべくフタしていた。色々なところが動いているのがわかったけれど。とりあえず今日出てきた。」


「ギリシャの公務員 自分がその立場だったらやっぱり既得権益に走ってしまうだろう。 マルタなんかも40歳代で引退して80%の年金をもらって近所の人と和やかな生活をして。」


「キューバ 1950年代のアメリカの車が走っていて貧しいんだけどみんなにこにこしていて。あの幸せそうな顔はなんなんだろう。日本をみていると福袋に並んだりバーゲンで走り回ったり。」


「幸せ感ということについて。ユーロでもスイスだけ抜けてますね。永世中立という、小学校時代習った社会科学的なことで生き残ってるのはこれぐらいしかないなあ。スイスもブータンも同じなのかな。スイスは自分で作っていた。ブータンは最近まで鎖国みたいなことしていた。」


「スイスは自分で作ってますからこのままいくだろうと。彼らは本当に今ブータンの言うような幸福度というのが高いんだろうか。若いころヨーロッパを回ったとき、スイスは軍隊が目についた。自分たちで国を守るんだ、平和をかちとってるんだという意識が強い。日本はアメリカに任せてあまり考えずにきてしまった」


「スイスは高負担、高福祉だと思う。それだけの軍隊を維持するのだから高負担だ。しかし幸福なのかなと。あまりそこを研究している人がいない。」


BlogPaint



「(正田)よのなかカフェでは去年スウェーデンを2回取り上げました。スウェーデンも幸福感でいうと必ず5指には入る国。あそこは個人の自立、自己決定がすごく幸福感に関わるので、たとえばお年寄り1人暮らし、老夫婦だけの世帯も多いけれど自分で自分の身の回りのことができることが幸せだったりする。スイスについては不勉強だがどちらかというとそちら(スウェーデン、自立)系ではないかと思う。一方ブータンはラマ教(チベット仏教)の国。つながりの人間観、社会観というのが強い。おそらくスウェーデンとブータンでは同じ幸せという言葉を使ってもちょっと別のことを言ってるのではないかと。日本もアジアのつながりの人間観の国で。」



話題は「幸せ、幸福感」というところに向かいました。
ここで、「われわれ1人1人の幸せって何?」という問題提起がありました。参加者お1人お1人にうかがいました。


「娘達と3人で食卓を囲んでおしゃべりしている時。今にも失われるかもしれない時だから、かけがえのなさを感じる」

「日々是好日。仕事あっての自分かなと」

「理想ですけれど、自給自足。いなかに暮らして家族とも地域の人とも経済的にもつながって。」

「 承認ということを教えていただいたが『ありがとう』と言われるときがものすごい幸せ。銀行のお客様、大学の学生、コンサルティング先。」

「家にトイプードルがいて膝の上に載ってくる。なでたり顔みたらああ幸せ、と。」

「正月に嫁いだ娘が連れ合いと子どもと連れてきて家内が台所でかいがいしくやって娘たちが手伝ってむこさんと私が酒の準備して。その瞬間はほんとに幸せだと思う。一方平日に戻って外部の人と交流して。それも健康だからできてるのかなと。
ペットを連れて散歩しておいと言うと見上げてくると可愛いな。日常が平和に穏やかにすすんでいる。それもある程度収入があってある程度できるから。無収入の状態で幸せってあり得るのかな。70まぢかにしてまだわからない。ものすごくはかない。はかない、なんてことを若い人に言ってしまったらいけないかな」

「息子が今年成人式。子育てで苦労したときもあるけれど今は大学生。子どもが幸せでやってくれてると。」

「友人と買い物にいったり家族で3人でご飯食べながらしゃべるのが幸せ。1人でいるのとほかの人といるのとではほかの人といるのが好き。 幸せの基準がほかの人とちがうのかなと。」

「幸せの基準が1人1人違うのはあたり前。楽しいっていったけど今は楽しいのが幸せだよね。」


「共通するのは人とつながっているところかな。つながり傾向強い。」(※)

※注 すべての日本人が人とつながってるのが好きかというと恐らくそうではないでしょう。文化的にそれを強制されてるふしもあります。中に個体差もありながらトータルでは「つながり好き」な人が人口比で多い、そして社会のそういうカラーを作っている、のだろうと思います。


「与えることを幸せと感じることができると幸せを感じられる総量が多いですね。」



3962



「利他ですね。ソーシャルビジネスはぼくのライフワークです。ユヌスさんがやられたこと。
ビジネスの感覚でやれば公務員ももっと減らせると思うんですよね。ぼくが銀行支店長だったころ神戸市営バスの運転手の年収が1600万ぐらいなんです。神姫バスの運転手が500万です。
公務員がしなくていい公共サービスは一杯あると思うんですよね。そこを調整していくとプライマリーバランス改善するんですが。ギリシャと同じことにならないうちに手を打たないと。」

「ぼくの親戚が市役所に勤めてしょっちゅう休んでいる。それでも昇進昇格している。 公務員はだれから給与もらってるか毎朝唱和したほうがいい。 」

「日本経済を家計にたとえたらお父さん40万しか稼いでないのに90万使ってる。家計としておかしい。」


 ・・・そうしているうちにお時間となりました。最後に皆さん一言ずつ。


「このタイミングでユーロの話をもらったことにすごく感謝しています。」(松本氏)

「ひとりひとりが意識を変えていかないといけないという瀬戸際。最後に公務員の話も出たががらっと変えていかないといけないと感じた。」(山口氏)


「選挙による社会変革って日本ではだめなんじゃないかなと思ってましたが。今日のお話で励まされた。選挙というもの、もっとわれわれが上手に使いこなせれば。」(正田)


 
 大変に気づきの多かった回でした。

 「ユーロ危機」に始まって1人1人の幸福感の問題、そして公務員の問題。対岸の火事と思っていると実は私たちに密接につながっている。改めてそういう感覚を持てた第30回よのなかカフェ。

BlogPaint




 初めて来られたあるかたの言葉、

「自分の中でふたをしていた、色んなものが動いていてそしてニュースでやっていることの意味がわからなかったけれど、今日とりあえず来た」。

 何気ないけれどなんと貴重な言葉でしょう。こういうことが聴ければ長いことせっせとメルマガを発行した甲斐があったというもの。


 怪しげなものにオルグする気など全然ありません。ただ皆さんが1人の人としてしっかり大地に足を踏みしめて立っている、歴史上の今この瞬間に生きている、そんな実感が持てれば。


 今回は節目節目にファシリを代行してくださる参加者さんが沢山おられ、ありがたく甘えて進行させていただきました。


 多忙な中時間を割いて準備し、今回のよのなかカフェで解説してくださった松本さん、そして素晴らしい参加者の皆様、スタッフの皆様、ありがとうございました!



 あとで個人的に反省したことです。

幸せときかれて反射的に娘達との時間と答えてしまったけれど、仕事すなわち受講生さん方とのやりとりを通じた幸せもあるじゃないかと。マネージャーである受講生さんが部下への働きかけによって、若い人が仕事にやりがいを見出しイキイキときびきびと働く、それを幸せだと感じた瞬間がなんどもあったじゃないかと。

それを差し置いてプライベートがぽろっと出てしまったのは本音かなというのと、受講生さん方に関して生まれた幸せが暗転するときもたくさん経験し

 ―それは往々にしてその会社の教育担当者の気まぐれや交代や無知、他者からの洗脳、権力を行使して他人の幸せを断ち切りたい底意地の悪い衝動、などによる― 

最近は幸せをあまり感じられなくなっているのかな、と。


それはちょっとというか大分余談です。
こんなこと言う教育研修業者も私ぐらいなものでしょう。


よのなかカフェ次回は―、

―山口裕史さんのご提案ですが「ゴマすってないですか?」と正田はききかえしました。いやもちろん、ゴマすっても何の得にもならないと思います―

「承認中心のコーチング」を、とりあげさせていただきます。

2月2日(木)19:00〜 アロアロにて。詳細は近日アップさせていただきます。


神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp