正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

タグ:安全

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―


エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ


インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)



エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ


 インタビュー後、水田さんより客室本部のオフィスをご案内いただきました。

 ここでは、CAの方々がフライト前のブリーフィング(小会議)を行ったり、フライト後のレポート作成を行ったりしています。大人数のため個人所有の机はなく、PCも共用のフリーライドなオフィスです。長い通路を隔てて、応接室から向かって左側にCAさんたちがブリーフィングしたり個別インタビューする机の島、そして右側(窓側)にマネジメントの人達が座る机があります。お話の中ではこのマネジメントの人達の机の配置を変えてみたりしていたよう。

 マネジメントの机には大きな名札が。CAさん達はフライト業務が中心で、マネジメント層との接触時間が少ないため、なかなかマネジメント層の名前をおぼえられない。名前がわからないと話しかけづらいからと。


BlogPaint


マネジメント層の机。大きな名札(約10cm四方)が、針金の高さ30cmほどのスタンドで掲示してある(赤丸印)



「かつては、この中で課長を一番手前に座らせたりしていたようです。今はまた課長が一番奥になっていますね。試行錯誤のすえ」と水田さん。


 マネジメントの机の上に記入した「グッドジョブカード」を入れる箱が。失礼して、1枚のグッドジョブカードをみせていただくと:

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「FLT TIMEの短いソウル便において、最後までCABINでも笑顔を絶やさず、慌ただしくなりがちな雰囲気の解消に繋がっていました。お客様にもクルーにも安心感を与えるマネジメントを今後も継続していって下さい。」





 CAさん達のブリーフィング風景もみられました。

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フライト前に搭乗者数、気象状況などを確認しあう。



 7月の安全標語は、
「気づきを声に出そう」。これが社内のポスターや、PCの壁紙になっていました。
具体的な「気づきの言葉」として、

「それ、いいね!」
「大丈夫?」
「何故?どうして?」
「助かった!ありがとう!!」


などの例が挙げられています。


水田さん曰く、
「これは、まさに『安全』と『承認』の融合ですね。私たちは、『おせっかいCA』をつくりたいんです。今の若い人はお互い関わる力がやや弱いかなというところがありますので」


 そして、「とってもアナログでしょ?ずうっと試行錯誤の連続なんです」と、謙虚におっしゃったのでした。

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(了)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて



神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

■安全文化評価調査、社員満足度
■「安全」「規律」と「個性」「自由闊達」





インタビュー登場人物

河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)



(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

■安全文化評価調査、社員満足度




正田:そうですか。ありがとうございます。

 こういった承認のマネジメントの下で離職率や社員満足度、顧客満足度というのは、他社様との比較というのはございますでしょうか。


河本:離職率は、年によっても社会環境によっても違います。就職が難しい時代などは離職率は低くなりますし、そういう意味では幅はあります。

 社員満足度、顧客満足度は、年に1、2回の調査を行っています。自分たちの健康診断ではないですけど、定期的に行い、特にそれを他社と比べるということはしていません。ただ、自分たちANAの強み、弱みは何なんだろうという分析は、他社を参考にしながらするときはあります。また、他社がなさっている顧客満足度の調査方法や他業種のやっていらっしゃる手法については、十分参考にさせていただいております。

 それに加えてもう1つ大事なのは、安全文化評価調査というものもやっております。安全文化をつくるためのアンケートですね。


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正田:安全文化評価調査。どういったものですか。どんな設問なんですか。


水田:主として安全に対して、どのような意識でやっているかですとか、安全を高めるために自分がどんなことを行っているかとかです。こうした問い掛けに対する答えの中に自分自身の意識だったり、会社全体の風土に関わるようなことが見えてくるということです。


正田:非常に興味深いです。自己評価でいらっしゃるんですよね。


水田:はい。かなりの量の設問ですけれども、結果としましては、経営に近い層と、中間管理職的な人と、一般職という、それぞれのくくりの中で、意識の違いがあるとか、安全に対するとらえ方が違うといったことがあります。例を申しますと、「すごくよくやっています」「こんなに制度を整えて安全を高めています」という意識が強い層がある一方、「そこまでではない」といった層もありますね。そういうことについて、違いがあるということはちゃんと認識しておかなければならないと思います。「できている、できている」と思っているのはやっぱり良くないです(笑)。そういう結果のフィードバックもしています。


河本:そういう調査をやっているのは、やっぱり自分たちがどういう状況にあるかということをきちんと把握して、次につなげていこうという手法として使っているということですね。経営管理指標にもしていますし。スコアを高めていこうというのは、私達も目標としては持っていますけれども、数値ありきというよりも、品質がきちんとしていれば、結果として数値はついてくるだろうという考え方ですね。


正田:そうなんですか。安全文化評価も、これもまたすごく興味深いです。設問が沢山あるとおっしゃいましたが、大体何十問ぐらいですか。


水田:50(問)を超えるぐらいあったのではないかと。


正田:それは多いですねー。


水田:疲れるぐらいあります(笑)。似たような設問を繰り返すというところがありますね。

社員満足度も少し似たような感じです。例えば上司との関係ですとか、そういうふうな設問もあったりしますので、そこからやっぱり意識の違いというのが見てとれたりします。


正田:例えばもしこのお1人のIM(インフライトマネージャー)のもとで、乗務員の方からわるい評価が続いたという場合は、どんなふうに。


水田:1人のIMの下に大体60人ぐらいの客室乗務員がいまして、そこまで細分化したデータは出てこないのですが、課の単位ですとか、部の単位ですと出てまいります。ただ、課や部によって違うというところはなく、管理職またはマネジメント層側の認識と若い人との認識の違いということがあるかもしれません。

 例えば「自由闊達な雰囲気」があるかないかということのとらえ方の違いが、長年指摘されてきているんですけれども、どうしてそういう違いが生じているのかなということを、私達なりに結果をみながら考えたりはしています。

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正田:そうですか。自由闊達がない、と。


水田:自由闊達にしていると私たちは思っているんですけど(笑)。


河本:「安全」に関わる部分では規程ですとか、ルールは結構決まっています。業務上そうしなければならない部分がありますので、やはり規程に縛られてしまうところはあります。自由な雰囲気でしようというものの、仕事柄、やはり指揮命令系統ははっきりしているんですね。そうでないと、脱出するときですとか、何か緊急事態が起こったときに、誰が誰に対して指示をするかですとか、誰の監督下に置かれるのかということは、ある意味ルールで決めておかないと、かえって混乱します。そういったことも考えますと、やむを得ない側面もあるのかな、と思いますし、それをあまりネガティブにとらえるのではなく、自分たちの業務の特性として見て行かないといけないのかなとも思います。


正田:やっぱり、規律を守っているお姿というのが私達にはかっこよく映るんですけど。


河本:規律を守ってきちんと仕事をしていることが、航空会社として、公共交通機関として、お客様の安心感につながっていくということは非常に大切だと思っています。それは整備士もそうですし、パイロットもそうですし、空港で働く者、すべてがそこを意識しているところはありますね。


正田:航空業界ということでいえば、例えばサウスウェスト航空さんとか、あるいは今時のLCCさんとかで、自由闊達な雰囲気とか、ポロシャツが制服で、ということをセールスポイントにするところもありますよね。


河本:そうですね。ただ、それらも安全を前提にした中でのことだと思います。個性は、ANAの中にも、LCCの中にもあり、それはどんどん出していけばいいと思います。型にはめるということではなく、ポリシーはしっかり明確にしておかなければならないという意味で、各社のマニュアルであり規程だと思っています。


正田:なるほど。

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((6)「ゆとり世代」の指導の仕方は に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて





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ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

■転換点は2000年―「上位下達」から「逆ピラミッド」の模索
■CAとマネジメントの距離を近く



インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)

ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)






(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

■転換点は2000年―「上意下達」から「逆ピラミッド」の模索



正田:そういった、声掛けをする、関心を持ちあうあり方というのは、ANAではいつごろから始められたんですか。



河本:弊社の中にお客様の声やご意見をお伺いする「CS推進室」という部署があるのですが、その部署が主体となって2000年ぐらいから「エクセレント・サービス・アワード」という表彰制度を取り入れています。客室部門としては2002年の10月からこの「グッドジョブカード(当時はスターカード)」を使った表彰制度を取り入れました。
ただ、グッドジョブカードだけが承認のマネジメントでもないですし、エクセレント・アワードだけがそういうことでもないという意味では、脈々と先輩たちから受け継がれてきた文化ではないかと思っています。


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正田:といいますとつい他社様との対比をイメージしてしまうんですが、ANAは何故そのようになったんでしょうか。


水田:例えば私どもの部門の中だけのことを申し上げますと、過去は本当に上意下達といいますか、上から下に対して厳しく指導するという文化がございまして。

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正田:あ、やっぱりあったんですねえ。


水田:ありました(笑)。私たちが入社したころは、先輩の言うことにはまったくNOとは言えないぐらい、すべて「はい」という(笑)、そういう文化の中でやってきていたのですが、やはりお客様に身近に接している現場の人達が色んなものを持っていて、その人達の意見をちゃんと取り上げて活かしていくということが、会社にとってもいいサービスができるようになる、ということに気づいたんだと思います。それは競争が厳しいからであり、競争が厳しいという環境を考え、その中でそれをやっていかなければならないということに気づいたということです。

 そのため、ある時期は、組織的にも部長がいて、リーダーがいて、マネージャーがいて、班長がいて、というピラミッド組織を逆にしたんですよ。


河本:逆ピラミッドの組織ですね。


正田:言葉としてはきいたことがあるんですが、実際にできるものなんですか。



■CAとマネジメントの距離を近く



水田:まずは組織図をそういう形に作り替えてみたり、あとは実際にフライトをしているCAが所属しているセクションで、管理職がよりCAに近づけるようにということで、座り方を変えてみたりですとか。デスクの配置ですね。また、近くに来てちょっと座って話ができるようにと、椅子を置いてみたりですとか。フライトをしているCAと、それをみているマネジメントの人達の距離感を近くしようという、そういう時代の流れだったと思います。


正田:それが何年ごろのことですか。


河本:先ほどの話にあった2000年ぐらいですね。競争環境も厳しくなりますし、ANAの会社全体が生き残っていくためには、以前はなかったお客様の声を聞くセクションができたり、そして、形だけではなくて、例えばそのお客様の声として聞いたものを調査をする、顧客満足度調査をする、あとは、それと併せて社員満足度調査をするですとか、そうしたことが少しずつ走り始めていったのと、一体となって進んだと考えていただいていいと思います。

 弊社の行動指針に「お客様の声に徹底的にこだわります」という言葉があります。こういうものを経営の中に取り入れ、お客様の満足、そして従業員の満足が永続的な企業の発展につながるんだという思いを持ち、やってきているということです。

 ですので、繰り返しになりますが、客室(本部)だけでやっているわけではありませんが、ただ、客室はお客様との接点が多いですし、時間も長く、また、やはり航空会社の顔という意味ではブランドの代表ですよという位置づけで、より強い教育だとか、意識をもたせるような取り組みがすすんでいったんだと思います。


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応接室に掲示してある経営理念・行動指針




正田:そうしますと特定の創始者の方というのは特にいらっしゃらないわけですね。例えば何代前の社長さんとか。


河本:それはないですね。だれかが作った、というよりもトップマネジメントが、どういう経営をすべきかという中で、組織も整え、こういった制度もつくり、安全に対する取り組みの整備だとか、お客様満足に対する取り組みの整備だとか、全部一緒に進めていったということです。これだけを取り出してやったわけではありません。



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((4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
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ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

■「承認のマネジメント」とは言っていないけれど―
■3万3千人が使う「グッドジョブカード」




インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)

ききて:
正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)



(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観
■「承認のマネジメント」とは言っていないけれど―



正田:ANAの承認のマネジメントというと、これまであまり外に出たのを拝見したことがないように思うんですが。


河本:お話をする前に、確認をしなければいけないと思っていたのですが、ANAでは特に「承認のマネジメント」という言葉を使ってはいません。ただマネジメントをする中で、自分たちが大切にしたい価値観ですとか、文化の中で、「ほめる」「お互いを認め合う」「支え合う」「支援する」、そういった言葉を多く使っているというのが現状かと思います。また、こうした人材育成の中でチームを束ねる人達にはコーチングなどの研修を行い、そういう中では、「承認するというのは、ひとつの大切なことですよ」と、言葉としては使っています。


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正田:そうですか、それは申し訳ございません。事前にご質問項目を考える上で、そのあたりもちょっと気になっていましたので。


河本:お話する中で合ってくると思うんですけれども、承認をするというのは、認めるとか、お互いのことに関心をもつという意味では、私達も非常に多用しているフレーズですので、そんなに違わないというふうには思います。


正田:ありがとうございます。それではちょっと言葉の部分を柔らかくとらえながら(笑)、そういったものがよく使われるマネジメントといいますか、お仕事の現場というのは実際どんなものなんでしょうか。


河本:あとで少し職場を見学していただければと思いますが、ここからクルーがフライトに行って、飛んで帰ってくる。そういった場面で、現場の客室乗務員とマネージャーたちが、色々接点を持っているわけです。そういった中での声の掛け合い、フライトの中でこういうことがあって、お客様からこういうご意見をいただきましたということであれば、それに対して「ありがとう」とか「良かったね」というような声を掛けていく、というのが日常的にございます。


正田:え、そういうところを見せていただけるんですか。


水田:実際にフライトをしている客室乗務員との接点においては、そういう交流があるということですね。



■3万3千人が使う「グッドジョブカード」


河本:それと、「グッドジョブカード」というものがあり、これをデスクで渡したりする場面を見かけるときもあります。もちろん毎日毎便ではないんですけれども、このような形のものも日々の中でやっています。

(グッドジョブカードを渡す)


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ANAのグッドジョブカード


正田:ありがとうございます。


河本:みんなこれを携行していて、お互いの仕事をいいなと思ったら、個々に贈り合うというものです。

 全社的にもこういったグッドジョブカードを運用していまして、こういう承認のマネジメントといいますか、褒めるとかお互いを支援するというのは客室だけではなく、グループ全社員で取り組んでおります。



正田:そうなんですか。凄いことですね。いやいや取ってつけたようにきこえたかもしれませんけれど本当に心から(笑)。



河本:フライトから帰って来たクルーへの声かけですとか、台風などでダイヤが大きく乱れたりしたら、みんなにも大変な勤務をしてもらっていますので、そういうときに「お疲れ様」ですとか、「ご苦労様」というような声を掛ける姿は、どこの職場でもそうだと思いますが、それは日常的にありますね。


正田:先ほど全社員というお言葉が出ましたが、皆様が全社員っておっしゃるときはどのあたりまで、全部で何人の方をおっしゃってるんですか。


河本:現在、ANAで約1万3千人位、グループで約3万3千人です。この羽田空港だけでも何十社もの会社の社員がいて、飛行機1機が飛ぶのにも色んな会社が関わっています。そういう方たちも仲間として、こういうグッドジョブカードをお互い受け渡したりしています。
また、グループ会社でなくても、例えば地方の空港などへ行きますと、その空港で地元の企業に採用されて働いてくださっている方もいらっしゃいますので、その方たちも仲間ですから、もっと広い範囲になるかもしれないですね。


正田:それは羨ましいですね。


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((3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ


あとがき・石切にて





神戸のコーチング講座 企業内コーチ育成協会
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ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―
(1)CAは約6000人の巨大組織

■北京線就航25周年
■6000人を部・課・グループ・班に分割




インタビュー登場人物

河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年より常務取締役執行役員。以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)


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(1)CAは約6000人の巨大組織

■北京線就航25周年



正田:去年、長直子様より承認大賞に大変素晴らしい応募作品をいただきまして、大賞を授与させていただきました。そのあと寺田まさご様も神戸での表彰式にご来場いただき、お目にかかることができました。ほんとに素晴らしいお二人で。




河本:お二人ともわたくしとは先輩後輩の関係です。現在はANAに籍を置いておられませんが、二人からお話を聞き、今回の場を持たせていただくことになりました。今日は足をお運びいただき、ありがとうございます。

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正田:ありがとうございます。実際にお会いしてやっぱり素敵な方々で、どぎまぎしております。

(一同笑)

正田:私自身も個人的にANAとはご縁がございまして、20数年前の中国語学科の学生時代にANAが北京線就航される直前に、当時の成田の事業所で客室乗務員(以下「CA」と略)の皆様に中国語を教えるというお仕事をしたことがございます。その時びっくりしましたのが、客室乗務員の皆様はわたくしが学生だということをご存知でいらしたはずなんですが、大変皆さんお優しくいい生徒さんでいらして。意地悪をされるということなどは全然なく。ああ素敵な方々だなあと思ったおぼえがあります。

CAさんの世界、それまでご縁がなくTVドラマで拝見するぐらいで、ばちっとお化粧をきめて綺麗な方々、でもちょっと冷たい雰囲気を漂わせて、というイメージだったんですが(笑)、イメージを一新したおぼえがあります。


河本:ちょうど今年が日中国交正常化40周年、また、弊社便の北京線就航25周年ということで、色々と盛り上げていこうとしているところですが、そのまさに就航当初お世話になったということですね。わたくしもどこかで生徒として習ったかもしれません。

今は上海にCAのベースも作って、現地採用のCAも増やしていく中で、機内での言語対応力の向上にも取り組んでいるところです。


正田:その後長(直子)さんからも、承認大賞のエピソード以外にも沢山の御社での先輩後輩のやりとりのお話を伺わせていただき、腑に落ちました。そういうことの積み重ねが、ANAファンの方が言われる柔らかい優しいサービスにつながっているんだな、と。


河本:ありがとうございます。過分なお言葉で。


■6000人を部・課・グループ・班に分割



 
ここで、ANAの会社組織全体、また、全社と客室本部の関係について簡単にご説明をいただきました。

 まず、どのような会社にでもある総務部や人事部、広報室といった本社組織。
 そして、販売計画を行う部署と併せ、世界・日本各地に配置されている営業支店を含めた販売部門。
 また、貨物事業については「貨物事業室」という組織があります。
 そして、空港に目を移せば、各空港における業務を含めたオペレーションを司る「オペレーション統括本部」。
 このほか「整備本部」、パイロットの所属する「運航本部」、そしてCAが属する「客室本部」があります。
 「客室本部」は、本社で5000人、グループ会社も含めると、6000人近いCAがいる巨大組織です。
 
 その客室本部の組織の中はというと…。

 安全をはじめとしてサービスや様々な業務手順・規程関連を司る部署、訓練や教育の企画・実施を担当する部署、そして、ANAとしては5千数百名のCAが所属する「乗務部」という組織があります。「乗務部」は3部に分かれており、また、各部の中にそれぞれ3つの課があります。加えて、大阪をベースとする三百数十名のCAが所属する課もあります。このほか上海、ロンドン、また、最近では韓国と台湾も含め、これらそれぞれをベースとするCAがいます。


 次に、乗務部の中をさらに詳しくご説明いただきました。

各課にリーダーと呼ばれる者がいて、これが一般的に言う課長です。ただ、課と言っても、かなりの大所帯ですので、課の中を6から8の「グループ」に分け、そして、さらにその中に7つから8つの「班」を設けています。

 リーダーがいて、その下にIM(インフライト・マネージャー)という役職の者がおり、その者が1つの課の中に6から8ある「グループ」を統括しています。そして、最小単位である「班」をまとめる、いわゆる班長がTC(チーム・コーディネーター)という者になります。




河本:わかりやすく言えば「軍隊組織」的なところがありますね、ある意味(笑)。小チームがあって、そのチームを束ねるグループがあって、またそのグループを束ねる課があって、そして部があって、という階層になっています。


正田:「承認大賞」のエピソードの当時でいうと、寺田まさごさんがいらして、長さんがその下にいらして、という感じですか。


河本:その当時はたぶん、寺田さんはIMで、長さんはその中の班員だったと思います。班の中の一員である長さんを寺田さんが推薦してインストラクターに、ということだったと思います。



その巨大組織の中で働いている5000人のCAは、どうか。
「現在では34,5歳というところの人数が多い構成になっています。」(ANA客室本部)とのこと。「やはり女性ということもありますので、会社の中のキャリアと併せて、個人の生活環境と言いますか、結婚や出産・育児をきっかけに退職したり、休職したりする者が多いという状況です。ただ、会社としても女性として働きやすい環境を整えていますので、退職ではなく休職を選択して、引き続き乗務に復帰する者も昔に比べると増えてきています。」(同)




河本:とにかく大きな組織ですので、班単位にまで細分化しながら運営をしているというのが実情です。それを前提にお話を聞いていただけると、わかりやすくなると思います。


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((2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

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―河本宏子・客室本部長にきく―


プロローグ:「承認大賞」から生まれたインタビュー


「あなたなら大丈夫。若いうちに経験したことを、いつかこの部署に戻ってきて活かしてくれると信じています」

 昨年、ある女性マネージャーの「期待の言葉」が当協会主催のイベント「承認大賞2011プロジェクト」の部下部門の中で、審査員の得票を集めました。

 これは、20年も前の全日本空輸株式会社(ANA)で、当時の客室乗務員(CA)同士の上司から部下へ発した言葉。

 その詳しい背景などは、こちらのページをご覧ください:

「あなたなら大丈夫。若いうちに経験したことを、いつかこの部署に戻ってきて活かしてくれると信じています」長 直子さん(女性、商社関連会社勤務、管理職。44歳)

http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51768319.html

「承認大賞2011プロジェクト」 http://shounintaishou.jp



 応募した当時の「部下」、長直子さん(現商社関連会社勤務)は、見事、大賞に輝きました。
 そして当時の「上司」こと寺田まさごさん(現会社経営)も、昨年秋三宮で行われた表彰式にサプライズで来ていただき、元上司―部下のめでたい2ショット、と相成りました。
 

1 長氏&寺田氏

 

 受賞の言葉に人柄がそのまま表れているような、「たおやか」な女性上司の寺田さんと、その横でいつになく少女のような表情の長直子さん。

 
 ところで長さんによると、「承認」の言葉というのは当時のANAの中で珍しくはなかったようなのです。日ごろから上司―部下、先輩―後輩の間で日常的にそうした温かい会話が交わされていた。さらに、ミスしても人を責めずシステムを変える、といった「システム思考」的な風土もあった、といったお話も伺いました。

「承認の温かさ、ありがたさはその後も私の基軸となっています」と、長さん。

「非常に興味ぶかいですね。どうしてそういう風土を維持できるのか、ぜひ一度、現在のANAの方からもお話を伺ってみたいです」
と私。

 そこで長さんから今回インタビューさせていただいた、河本宏子・客室本部長(当時。2014年4月より常務取締役執行役員)をご紹介いただいた、という次第。

 お忙しい方だと伺っていましたので、本当に恐る恐るメールをお出ししたところ、客室本部のかたから「インタビューOK」のお返事をいただいたときはどんなに嬉しかったことか。

 今回のインタビューは、今年7月10日、羽田空港近くのANAオフィスで行われました。ここに登場される河本氏、水田氏それにANA客室本部、広報室の各ご担当のかたにはお忙しい中、大変にお世話になりました。


それでは、次の記事からその模様をご紹介いたします―。



ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

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