太田肇・同志社大学政策学部教授の新刊『「見せかけの勤勉」の正体―なぜ成果主義は失敗したか』(PHP研究所)。


◆仕事に対して非常に高い熱意を感じている日本人は9%、14か国中最低
◆同、「非常に意欲的である」は2%、16か国中最低
◆職場生活に「満足」「やや満足」は5か国中最低
◆今の職場で仕事を「続けたい」が11か国中最低


といった、日本人の意欲の低さを示す気のめいるような調査結果群。


そしてチームワークを示す指標(同僚を信頼できるか、仲間を助けるか、ノウハウを教えるか)も欧米に比べ著しく低い。


労働生産性はOECD30か国中20位、主要7か国中では14年連続最下位。


「要するに彼ら(日本人)はがんばって長時間働いているように見えるが、そうした働きぶりのかなりの部分は『見せかけのやる気』だった可能性が高い」


と、著者は言います。



そして、IT化により定型的な仕事が減少した現代では、機械化、自動化できない仕事が残る。


それは人間特有の能力である独創性や創造性、勘やひらめき、想像力や判断力などを活かす仕事、臨機応変で心の込もったサービスなどである。あえて最大公約数的な言葉を探すなら「知恵」だろう。


(中略)そこで一人ひとりに問われるのは、能力・資質とならんでモチベーションの質である。「見せかけ」ではなく、本物のモチベーションが必要なのだ。


そして、本物のモチベーションは本人の自発性から生まれる。



うーんお母様研修で出会った幼児教育漬けお母様にきかせたいよう。


古くて新しい議論ではあるが、では本物のモチベーション、自発性はどうしたら生まれるか、ということで、著者は「やる気の足かせ」という概念を提起します。


1)くすぶる、残業への不満
2)定まらない目標
3)過剰な管理
4)まだら模様の人間関係
5)不公平な評価、処遇


詳しくは本書をお読みください…


寡占(独占)状態にある大企業や、政府によって守られてきた銀行、それに役所のような非営利組織などでとりわけ管理の強化はとどまるところを知らない。なぜなら管理を強化しすぎてメンバーのやる気が落ちたり仕事の効率が低下したりしても市場で淘汰されることがない。という指摘はまさしく!という感じ。


「管理されることに慣れている日本人は、過剰管理が相当ひどくならないかぎり適応してしまう」。


 うんうん。「それヘンだよ」という裸の王様発言が出てきにくいのかもしれない。


 
 「承認」がらみの著作が続いた太田教授だが、批判精神は健在。

 「ほどのよさ」「いい按配」という感覚をもつことが大事ですね。これも自戒をこめて。


 唯一、「マネジャー」に関する記述には同意できない部分もあるけれど…^^;、
(つまり、「片手間でよい」という議論と、本書で示す過剰管理以外の部分での要求水準との間にギャップがあり、全体としては「要求水準を満たしたうえで片手間でよい」という議論になっているから。非常に有能なマネジャーでなければいけないことになるし、そのためのトレーニングをどうする?という話にもなる)


 「日本人の働き方」について、転換点を示した著作になるかもしれません。




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