正田佐与の 愛するこの世界

神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与が、「承認と職場」、「よのなかカフェ」などの日常を通じて日本人と仕事の幸福な関係を語ります。現役リーダーたちが「このブログを読んでいればマネジメントがわかる」と絶賛。 現在、心ならずも「アドラー心理学批判」と「『「学力」の経済学』批判」でアクセス急増中。コメントは承認制です

タグ:承認

 このブログの友人、佐賀県の研修業Training Office代表、宮崎照行さんから、「教育困難校における承認の重要性について」という原稿をいただきました!

 もともとは、わたしがKindleで『行動承認』の続編、『行動承認第二章』を書くにあたって宮崎さんに寄稿をお願いしていたのに対しこたえて送ってくださったもの。

 宮崎さんはこうした「教育困難校」でのマナー講師で既に8年のキャリアを持ち、その5年目にして心境の変化で「承認」のマナー教育に転換されたそうです。すると起こったことは…。

 図々しいお願いで、Kindle掲載前にブログでの掲載もお許しいただきました。宮崎さん、感謝!

 かつてわたしは宮崎さんのご経験を伺い、「この手法は、社会を建て直す力のあるものだと思っているんです」などと、大言壮語を吐いたのでした。それにしてもこうして新たな担い手の方が出てくるのは嬉しいことです。論理的で内省的な宮崎さんの言葉で、新たな「承認ワールド」を体験していただきましょう。

 若い人が伸びる風景を想像するだけでワクワクするという読者の方にお勧め!「教育困難校」もそうですがすべての教育関係者のかたに届くことを願って、お送りします。

******************************************

教育困難校における承認の重要性について

宮 照行


 教育困難校(高校)におけるキャリア教育やマナー指導で大切なものは何かと問われたら、真っ先に答えるとするならば「承認」だといえます。
 教育困難校とは、はっきりした定義はありませんがさまざまな背景や問題を抱えた子どもが集まり、教育活動が成立しない高校のことです。私は高校生の職業意識を育てる「キャリアガイダンス」のマナー講師をしてもう8年になります。そのなかで教育困難校にも数多く足を運びました。
 こうした高校の生徒の特長として挙げられるのが、低い自己効力感です。
「就職するために、最低限のビジネスマナーを身につけておかないと面接を乗り越えることもできないし、就職しても苦労するよ」
などと言って動機づけをねらうのですが、生徒からは
「なんでこんな面倒くさいことをやらなければいけないんだよ。うざいな。やっても無理だよ」
というような、半ば投げやりの言葉が返ってきます。限られた時間の中で指導しなければならないので、この状態の生徒に指導することは困難を伴います。

 そこで通常ならば、『相手を承認する』という概念がなかった私や多くの講師は次のような指導方略をとります。

「屁理屈言わずにやってみる。私に合わせてやる! ダメダメ!何でできないかな?真剣にやっている?真剣にやってないからできないんだよ。ほら、真剣じゃないという証明が服装や髪型にでもでている 。」

 いわば喧嘩腰ですね。情熱と力でねじ伏せようとします。講師初心者や講義を形式的なテクニックで乗り越えようとする講師が陥りやすい罠です。

 しかし、このようなやりとりが続くと自己効力感の低い生徒は、ますます自信をなくししやる気がそがれてしまいます。最悪の場合、低い自己効力感が更に強化されるという状況に陥りました。本来、教育や研修では、知識や技能を習得するだけでなく自己効力感も高めるという目的もあるにも関わらず、全く持って逆効果の状況に陥ります。私自身、過去の指導方法では相手のことを思いやらずに形式だけを重んじていましたが、一向に思うように指導ができませんでした。

 そもそも、講義もコミュニケーションの一環だとすると相手の気持ちを考えずに一方的に押し付けてしまうことはコミュニケーション同様、うまく機能することができるのだろうか?ふとそうという疑問が生じ、思い切って『相手を承認する』という前提を取り入れた指導を目指すようになりました。

 『相手を承認する』という方法はいろいろと考えられますが、私にとって『相手を承認する』とは、一つには教える内容の質を徹底的に高めたり、相手のことをしっかり把握したりすることが必要ではないかと思っています。講師として教える内容の質を高めたり、相手のことをしっかり把握したりすることは、それこそ相手を承認している結果です。形式的な指導は相手を軽んじているような気がします。このように指導に承認の概念を取り入れることによって、下記のような変化が起こりました。

「なんでこんな面倒くさいことをやらなければいけないんだよ。うざいな。やっても無理だよ」(生徒)
「そうだよね。面倒くさいよね。でもさ、面倒くさいというのは、ただ慣れていないからそう思うんだよ。スポーツやゲームなどもそうだけどさ、最初はうまくやれないよね。全部を完璧にやる必要はないんだよ。少しずつチャレンジしてみようか!」(講師:私 )

 ここで大事なのは、相手の思いを講師側が素直に受け取ることです。逆に相手の思いを否定したり遮断したりすると、特に自己効力感が低い生徒はそっぽを向いてしまいます。

 次に実際に実演をさせます(例えば、挨拶)。しかし、1回目の実演で大きな声ではっきりと出せません。もう1回やってもらいます。間違いなく1回目より2回目のほうがしっかりできています。ここでこのようにフィードバックを行います。

「気持ちいい挨拶だね。やっぱり大きな声ではっきりとした挨拶をしてもらうといいよ。やればできるじゃん。姿勢も1回目よりも綺麗に伸びているよ。だから挨拶をされたほうは ものすごく気持ちいいんだ。もっと、僕を気持ちよくさせてみて」

 1回目でダメ出しをするのではなく、必ず2回目に何かしらのプラスの変化があるので、そこを具体的に指摘することで更にチャレンジしようとする気持ちが生徒側に芽生えてきます。慣れていないことを行うので、当然、修正点もでてきます。ここですぐにダメ出しを行ってしまうと元の木阿弥です。修正点を矯正するために私は

「もっと相手をの喜ばせてみようか。背筋をしっかり伸ばして、喉の奥から声を出すイメージで声をだしてみると、クリアな挨拶になって相手はもっと喜ぶよ 」(私:講師)
(生徒の実行後)
「ああ、いいね〜。やればできるじゃん。」としっかり私の感想を述べます。

 「相手を喜ばせる」これも、私が発見した生徒の中の「承認を求める気持ち」でした。相手を喜ばせることで相手に受け入れられたい。つまり承認されたいという本質的な欲求が生徒の中にあるのです。

 このようなやりとりが続いていくと、私と生徒には信頼関係が生まれてきて、指示に素直に従うようになります。ここまでくると伸びしろの大きい彼(彼女)らは、こちらがビックリするほどうまくできるようになります。そして、研修終了後、

「大きな声で挨拶するなんて、面倒くさくてはずかしかっただけで、やってみたら何ともなかったです。相手も喜ぶことなんで自分からチャレンジしてみます」(生徒)

という言葉をいただきます。こういう言葉を貰うと実に講師冥利につきます。

 私のような外部講師は彼(彼女)らにとっては異文化の人間だと思われています。彼(彼女)らの特徴としてもう一つ挙げられることは、牋枴顕修紡个靴討侶找感がすごく強い“ことです。だから、話を聞いていない素振りをしたり、あえて茶々を入れることでふざけてみたり することで、異文化の私たちの反応を試そうとします。私自身、これらの反応は警戒感の表象であると考えています。

 では、警戒感の強い生徒さんに対して異文化を理解してもらうためには、何が必要なのか?私は文化間の橋渡し役になる信念や行為は「承認」だと強く認識しています。ここで注意していただきたいのは、「承認」が行為レベルにとどまらせずに哲学・信念レベルまで達していることです。行為レベルに留めてしまうと、「承認」は人を動かすためのアルゴリズム的で薄っぺらな方略だと誤解されかねません。生徒とのやりとりの会話をご覧いただくと簡単にやっているように思われますが、形式的に相手を褒めたり、フィードバックを行ったりすると、特に教育困難校の生徒は異文化に対して警戒感が強いために、相手が真剣なのか表面的なのかということを簡単に見破られてしまいます。だから、哲学・信念レベルまで「承認」の必要性や重要性を認識しておかなければなりません。

 そして、抽象的なフレーズではなく具体的に。抽象的フレーズでは解釈が必要となるため、生徒たちにとっては間があきます。具体的かつシンプルに伝えることで、講師と生徒とのやりとりのリズムが中断されることがないことが効果を発揮しているのだと思います。
 そのため、講師自身素直な気持ちになって、少しの変化も見逃さないように真剣に相手を見なければなりません。

 「承認」は、低い自己効力感によって異文化に対する警戒感が強い人たちにとって、安心感をあたえる効果があるのではないかと考えています。それは、承認されることで、異文化における彼(彼女)ら自身の犁鐓貊蝓箸鮓つけることができます。居場所が見つかれば、チャレンジ精神も生まれ、フィードバックによる強化も効果を示しパフォーマンスが驚くほど向上していきます。根底に相手を承認するという信念をもって指導すれば、負のフィードバックも素直に受け入れてくれます。
 彼(彼女)たちにとって異文化の人間である私たちが承認を与えることで、将来の芽目を摘まないようにすることが私たちの責務ではないのだろうかということを念頭におきながらキャリア教育にあたっております 。(了)

******************************************

 「承認は人間の行動・文化・発展の『胚細胞』ではないか」という宮崎さん。

 というのは、きっといかようにも成長し、変容し、つながりあっていく驚くべき生命力をなぞらえて言われたのでしょうか… 現にそうした現象を眺めてきたわたしには、自然と受け取れる言葉でした。

 宮崎さん、ありがとうございました!

 NHK今期の朝ドラ「とと姉ちゃん」。5月31日は視聴率23.1%を記録し、今世紀の朝ドラで「あさが来た」を抜いて最高記録を更新しているそうです。

 今週は、ヒロインのとと姉ちゃんこと常子が女学校を出て就職しました。そこで、妙に「承認」が絡みそうな展開になってきます。


 就職先は文具会社で、職種はタイピストです。このタイピストの女性集団は会社の中でちょっと特殊な立場にあり、「タイピスト部屋」のようなところで仕事しています。

 昨日今日のあらすじを簡単に言うと…。

 未熟練でタイプの仕事をなかなか貰えない常子(高畑充希)。社内の他部署の男性に仕事を頼まれて引き受け、徹夜で机の整理整頓、書類整理、書類清書をこなす。真夜中まで残ってやっていた常子に、用務員のおじさん?がキャラメルを手に乗せてくれる。しかし時間内にやりあげた仕事に対し、依頼した男性は「もう帰っていいよ。邪魔」というのみ。

 タイピストの元締めのような先輩女性には、「男性は私たちを便利な雑用係としか思っていないから、仕事を引き受けてはダメ」と言われる。

 その先輩女性は、タイプでの清書を「原文通り打たなかった」と依頼元の男性になじられて切れ、
「文法がおかしいものを直してはいけないんですか!」
「私たちのことも男性と同様、ちゃんと苗字で呼んでください!オイや君じゃなくて」

 
…というような話です。

 はい、「承認研修」の受講生様方、ここには何と何の「承認欠如」が出てきましたか。

 なーんて、ね。

 答えは、「行動承認」「感謝」「ねぎらい」「ほめる(結果承認?)」「名前を呼ぶ」でした。基本中の基本です。皆さま、できてますね?(逆に、用務員のおじさんのキャラメルは、ささやかな無言の「承認」でしたね)

 ドラマでは、こうした「承認欠如感」を抱えてモヤモヤした常子が、家に帰って居候中の仕出し屋のおばさんに相談する、さあ何を相談するか、というところで今日は終わりました。

 もちろん戦時中の話ですから、「承認」なんて言葉はここに直接出てこないと思いますが…。


 ついでに、上記の話に常子の「義理のおじさん」(青柳家の養子。母の義理の兄弟)がサイドストーリーでちょっと絡んでいます。

 道で常子が自慢の多いおじさんとすれ違い、「ああまたいつもの自慢話をきかされるか?」と常子が身構える。しかし、おじさんは上機嫌の顔のまま、自慢せずに通り過ぎる。
 
 番頭の隈井(片岡鶴太郎)によると、おじさんはこのところ仕事で成功が続き、祖母(大地真央)からの信頼も厚いため、自慢しないでも良くなったのだという。ふうんと納得する常子。

 この話も、仕事自体によって十分な自信を得、また上司からの承認(信頼も承認のうち)も貰っていれば、自己承認をする必要がなくなった、というふうに解釈することができます。


 まあなんで「承認屋」の解説を必要とするドラマでしょうか。





 このところ「承認欲求バッシングの批判」という、批判の批判、ねじくれたことをやっていますので、「承認」のたいせつさがストレートに伝わりにくくなっていたのではないかと思います。

 しかし、「承認欲求」はわたしたち人間の基本欲求です。


 去年の10月、『21世紀の脳科学―人生を豊かにする3つの「脳力」』(マシュー・リーバーマン、講談社、2015年5月)という本について、読書日記を書いて考察しました。

 この本では、「五段階欲求説のマズローは間違っている」といいます。マズローは所属と愛の欲求、承認欲求を五段階の上のほうに置き、生理的欲求のところに置かなかった。しかし、現実には人間の赤ん坊は片時も愛されなければ、そして注目され世話をやかれなければ死んでしまう存在だ。たえず愛、注目、ケアを求める。だからヒトにとって、愛され注目されるということは生死のかかった基本欲求で、それを一生涯引きずるのだと。



●『21世紀の脳科学』をよむ(1)読書日記編―「自立した個人」の幻想、マズローとジョブズの犯した間違い
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51923413.html


●『21世紀の脳科学』をよむ(2)考察編―新しい欲求段階説、作っちゃいました
>>http://c-c-a.blog.jp/archives/51923415.html

 
 上記の「欲求」についての考察を、わたしがこの本に基づいて、またこれまでの人間観察に基づいて、勝手に図にしてみたものがあります。


スライド1

 
 
 
 ちょっと字が細かいのでまた手直しが必要ですけれど…

 この図では、「つながり欲求」を大きく赤色で分類して、その中の原始的な乳幼児〜思春期ぐらいまでのものを「生理的・利己的なつながり欲求」、もう少し成熟した、社会人以降のより高次な関係欲求を「社会的思考の欲求(承認欲求)」としてみました。

 でもざくっと言うと、赤い色のところは全部「承認欲求」とよべるのです。

 また、大人の年代になってからの「承認欲求」は、倫理的に高いレベルの人でありたい、ということも含みます。そのことを通じて他者に良い影響を与えたい、自分についても良いイメージを保ちたい、と思っているからです。決して自己完結的に成熟するわけではないのです。


 また、青い色のところはこれまでモチベーション論の中で高級なものとみられていたところでした。「能力をフルに発揮したい」「夢中になり集中したい(フロー体験だ)」、「挑戦・冒険したい」。

 これらは、重要なものではあるけれど、これだけでは自己完結的なモチベーションです。他人目線を欠いていて、ひとりよがりになる危険性もあるものです。赤いところとセットになって、初めて周囲の人に役立つことができるのです。

 ・・・という、わたしの解釈であります。


 脳科学者もいろいろな考え方があると思います。上記の『21世紀の脳科学』原題'SOCIAL Why Our Brains Are Wired to Connect’の著者リーバーマンは40代の少壮学者ですが、人と人の心の結びつきを重視するスタンスの脳科学者さんだったようです。ソーシャル・ブレイン(社会脳)系の人ですネ。いくらMRIのような文明の利器があっても、その学者さんがそういう仮説を立てなければそういう知見は生まれてきません。


 でもわたしはこの考え方に賛同するのです。


 
 また上記の読書日記では、その後繰り返し使うことになる「内側前頭前皮質」についての知見が出てきています。
 すなわち、「わたしたちが自己を認識する部位」と、「外部からの規範を取り入れる部位」は同じものだ、と。ひとつの部位がふたつの働きをしているのだと。


 だから、相手に規範を教え込みたいときには、相手が「たしかに自分のことだ」と思うような「承認」の言葉をかけながら教えてやるのがよい。

 「行動承認プログラム」の中では、この知見をこのように使います。

 はい、みなさん。「相手がたしかに自分のことだと思うような承認の言葉」って、どんなものでしょう?

 大丈夫ですね。「行動承認」でほぼOKです。「名前を呼ぶ」などもいいかもしれません。




 今日は、フェイスブックのお友達に「正田さんは承認のことを書かなければダメだよー」と言われてしまいました。

 最近たしかに寄り道ばかりしています。
 「承認」のすばらしさをもっと書かなくちゃね。

 とと姉ちゃん、明日からどうなるんだろう。



 ふたつの道筋があり得るんですが、
 ヒロインの常子自身には、「人に認められたいと思わず貢献しようと思って働け」というアドバイスがあり得ます。
 しかしタイピストの元締め、早乙女という女性の言い分ももっともです。この人の言動やスタンスには、「性差別と承認欠如が合体した状態」に対する抵抗が感じられます。こういうときに「人に認められようと思うな」ということは、「性差別を容認せよ」ということになってしまいます。
 
 さあ承認欲求バッシングか、それとも承認欲求肯定にいくか。目がはなせません。

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―


エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ


インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)



エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ


 インタビュー後、水田さんより客室本部のオフィスをご案内いただきました。

 ここでは、CAの方々がフライト前のブリーフィング(小会議)を行ったり、フライト後のレポート作成を行ったりしています。大人数のため個人所有の机はなく、PCも共用のフリーライドなオフィスです。長い通路を隔てて、応接室から向かって左側にCAさんたちがブリーフィングしたり個別インタビューする机の島、そして右側(窓側)にマネジメントの人達が座る机があります。お話の中ではこのマネジメントの人達の机の配置を変えてみたりしていたよう。

 マネジメントの机には大きな名札が。CAさん達はフライト業務が中心で、マネジメント層との接触時間が少ないため、なかなかマネジメント層の名前をおぼえられない。名前がわからないと話しかけづらいからと。


BlogPaint


マネジメント層の机。大きな名札(約10cm四方)が、針金の高さ30cmほどのスタンドで掲示してある(赤丸印)



「かつては、この中で課長を一番手前に座らせたりしていたようです。今はまた課長が一番奥になっていますね。試行錯誤のすえ」と水田さん。


 マネジメントの机の上に記入した「グッドジョブカード」を入れる箱が。失礼して、1枚のグッドジョブカードをみせていただくと:

2204



「FLT TIMEの短いソウル便において、最後までCABINでも笑顔を絶やさず、慌ただしくなりがちな雰囲気の解消に繋がっていました。お客様にもクルーにも安心感を与えるマネジメントを今後も継続していって下さい。」





 CAさん達のブリーフィング風景もみられました。

2206


フライト前に搭乗者数、気象状況などを確認しあう。



 7月の安全標語は、
「気づきを声に出そう」。これが社内のポスターや、PCの壁紙になっていました。
具体的な「気づきの言葉」として、

「それ、いいね!」
「大丈夫?」
「何故?どうして?」
「助かった!ありがとう!!」


などの例が挙げられています。


水田さん曰く、
「これは、まさに『安全』と『承認』の融合ですね。私たちは、『おせっかいCA』をつくりたいんです。今の若い人はお互い関わる力がやや弱いかなというところがありますので」


 そして、「とってもアナログでしょ?ずうっと試行錯誤の連続なんです」と、謙虚におっしゃったのでした。

2191


2211



(了)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて



神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は

■基本は個々の関係づくり
■怒られ慣れていない若い人には
■「厳しいけれど、冷たくない会社」
■マニュアルにないサービスを―お客様の声を励みに


インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)


(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は

■基本は個々の関係づくり


正田:最後のご質問になってしまいました。ゆとり世代と言われるここ数年入社組の新入社員、厳密にはここ2年ですか3年ですか、「承認」はどのように効果を及ぼしていますでしょうか。これは一般的に交通・運輸に限らない他社様で、どこでも頭が痛いっておっしゃる問題なんですが、いかがでしょう。


水田:あまりゆとり世代という方々の特徴という風にはとらえていないですし、明確にこの2−3年の傾向として、それまでと大きく違ってきているというふうには受け止めてはいないです。

それぞれ自分が何を求められ、どういうステージにいるかというところで、例えば、入社して、新しい仕事をおぼえるということもそうですし、何年か経って国際線の資格をとって、さらに業務領域を拡大したり、あるいは、先程申し上げたようなチーフパーサー、責任者となっていくときには、責任の重みが増すですとか、そういう1つ1つのステップの中でのプレッシャーなり、責任の重さみたいなものに対して多少大変だと思うような人達が出てくることはあるかもしれません。

そういう時に、1人1人に対して個々の関係を管理職層がつくり、悩んでいる人に対してのアプローチをすることによって、周りがサポートしながら、いい状態に持っていこうという、そういうことは日々のマネジメントの中でやっています。

2158



正田:それはそれは。すごいことですねー。


■怒られ慣れていない若い人には


水田:ただ、(若い人は)資質としては、すごく優しかったり、ナイーブだったりします。


正田:彼(撮影スタッフ・田村)も優しいんですが(笑)


水田:大切に育てられていて、怒られ慣れていない、そういう傾向は、この何年かの中には感じるということはございます。そういう人達に対して、昔風の、それこそ上から下に「何やってるの!」というようなことをやってしまいますと、ヘナヘナヘナと…(笑)


河本:折れちゃう。


水田:そういうことに対して、気は使っております(笑)。


正田:大変興味深いので教えてください。例えば水田様が入社された当初のころは、ミスした時にはどんな風に怒られましたか。


水田:それは、まずこう、(強い口調で)「あなた何やってるの?」という感じですね。


正田:はあ、今のような口調で。


河本:こんこんと。


水田:はい、お説教されるような感じで。


正田:ではもし、今の新人さんが同じようなミスされるとどんな感じですか。


水田:「(穏やかに)どうしてそういう風なことになったのかなあ」「少し振り返ってみましょうかー」みたいな感じでしょうか。(一同笑)


2191




正田:そうですかあ(笑)


水田:それで、自分の中に「ここが間違っていたのか」と考えさせていくような感じです。やっぱり怒られることになった結果がありますから、どこかが違っていたということだと思うんですね。そこに対して、本人に気づかせるということです。


河本:だからと言って、今、全部が「どうしたの?」というわけではありません。ティーチングとコーチングを使い分けるようにしていますし、憶えるべきことを憶えてもらわなければ困るという意味では、かなりスパルタ的にティーチングでやっているところはあります。また、それだけではないマネジメントというものも考えて人を育成していくということを推進しています。すべてがそんな風(「どうしたの?」)ではないですし、「こっちかこっち」ではなくて、使い分けですね。

 成長の段階によって、そしてまた個人差もありますので、1人ずつをきちんと見て行くということをやっていかなければならないと思っています。

 やっぱり「人」なので。「ANAはこうだ」ということよりも、1人1人が集まってANAになっていくということですので、1人1人がブランドの代表として、1人1人が自分を律して、行動をとってくれる人に育ってほしいという思いをこめています。

 厳しく「何やってるの!」から、「(優しく)何があったの?どうしたの?」(笑)という、そこを見ていくという、両方ですね。


2110


正田:そのスパルタの場面もぜひ拝見させていただきたい(一同笑)


■「厳しいけれど、冷たくない会社」


河本:やはり訓練の場面などは厳しいですね。パイロットもそうですし、整備もそうですけれども、先輩が後輩に対して、やるべきことをきちっとやっていないと、そこはやはり厳しいですね。ベースには安全というものがありますし、これも色んなところでよく言うのですが、私たちは「厳しいけれど、冷たくない会社にしよう」と、先輩に言われたことがあります。


正田:厳しいけれど、冷たくない会社。


河本:やはり厳しさは必要ですし、ただ、人としてはつねに血が通ってるというか、何のためにそれを言っているのかというと、自分の成長、会社が永続的に発展するために自分の先輩は今これを自分に伝えてくれているんだ、ということを感じられる、そういう育成をしていきたいなと思います。


正田:素晴らしいです。


水田:そこを感じてくれている人はいますね。色んな厳しいことを言ったかもしれないけれど、あの先輩は自分のことをちゃんと考えて、自分のために言ってくれているということが伝われば、しっかりそれを受け止められるんだと思います。感情的に自分のものをぶつけるようなことを言わないようにしないといけないですよね。


河本:だからと言って、感情がなかったら、それはそれで無味乾燥ですよね。やっぱりはらが立つときははらが立つし、嬉しいときは笑うし、悲しいときは泣くし、苦しくても泣くし。やっぱりそういうふうにみんなが活き活きと働ける職場でありたいと思います。

 先程グッドジョブカードのお話が出ましたけれども、この表彰式を3か月に1回ぐらい実施します。そのときには、本当にみんなが「この仕事をやっていて良かった」「ANAでこんなお客様に会えたことが幸せだ」ということとともに、「この賞をもらえたのは、今まで支えてくれた人がいるからです」「私がフライトでこのことができたのは、そのとき周りに仲間がいたからです」ということを、べつに強制して言わせているわけではないんですが、本当にみんながそういうコメントを表彰式のときにしてくれるんです。それは私にとっても、いいなと思う場面ですので、そういう意味でお互い認め合って、これからもどんどんいい方向に使っていきたいなと思っています。

 先ほどから「素晴らしいですね」というお言葉を何度も発してくださっているんですけれども(笑)、中身はそんなに素晴らしいことばかりではなく、つまずいていることも一杯あります。完璧ではないんですけれども、それをずっと続けるということを地道にやっていきたいと思っています。その積み重ねが、あとで振り返ったときに「ああ、こういうことだったなあ」となればいいと思います。


2109



正田:もう気持ちの中に素晴らしいっていうのが充満してしまっていまして、本当にありがとうございます。本当に貴重なお話を。

 よろしければ田村さんからも一言。


■マニュアルにないサービスを―お客様の声を励みに


田村:先日、6月末に伊丹から羽田に「ポケモンジェット」に乗らせていただいたんです。最後尾に座っていてポケモンの絵のついたカバーの写真を撮らせていただいておりましたら、客室乗務員の方がポストカードをお渡しくださいました。それはポケモンジェットにしか載ってないポストカードだったんです。知人の子どもにすごいポケモン好きがおりましたので、そのポストカードを上げると「あっ(喜)」と。


河本:嬉しいです、そういうこと(ポケモンジェットのポストカードのプレゼント)が行われているということが。それはマニュアルにはないけれども、そのときに、(シートカバーを)見ていらっしゃる姿に寄り添うことができれば、ということで、客室乗務員が判断したのだと思います。私たちはマニュアルにない、その時にできる、あなたらしい最高のサービスをしてほしいということをいつも伝えていますので、今のようなフィードバックで、「ああ、実践されているんだな」と思います。そういうお客様の声が私たちの宝物で、そういった宝物があるから、次のANAがあるのです。ありがとうございます。またそういうお話を伝えていきたいと思います。

 本当にそれが何よりのモチベーションで、「なんでそんなに頑張れるんですか?」と聞かれた時に、そうやってお客様が「ありがとう」と言ってくださったり、温かい言葉をかけてもらえることが、私たちの励みだと思っています。


正田:ありがとうございます。今日のお話でも6000人のアテンダントの方がいらっしゃるんだということ、こんなに軍隊的な組織というのは(笑)その中のマネジメントをここまで血の通ったものにしておられるのが、日々のご努力が凄いことだなあと思っておききしておりました。6000人の方々が血の通った、心のこもったサービスをされるために、マネジメントの皆様本当に汗を流しておられると思います。ご苦労様でございます。


河本:いえいえ、応援して頂ければ(笑)。こんどは、逆に厳しいご意見なども、いつでも頂ければ。

繰り返しになりますけれども、本当に行き届かないですし、今日こうしたことをお話させていただくのも、決して「私たちはできているから」ということではなく、「こんな取り組みをしている」というご紹介の気持ちですので、そのように受け止めていただければなと思っております。何卒よろしくお願いいたします。


正田:また今後を楽しみにさせていただきます。応援しております。今日は本当にありがとうございました。



2202


(エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ につづく)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて

あとがき・石切にて




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

■安全文化評価調査、社員満足度
■「安全」「規律」と「個性」「自由闊達」





インタビュー登場人物

河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)



(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

■安全文化評価調査、社員満足度




正田:そうですか。ありがとうございます。

 こういった承認のマネジメントの下で離職率や社員満足度、顧客満足度というのは、他社様との比較というのはございますでしょうか。


河本:離職率は、年によっても社会環境によっても違います。就職が難しい時代などは離職率は低くなりますし、そういう意味では幅はあります。

 社員満足度、顧客満足度は、年に1、2回の調査を行っています。自分たちの健康診断ではないですけど、定期的に行い、特にそれを他社と比べるということはしていません。ただ、自分たちANAの強み、弱みは何なんだろうという分析は、他社を参考にしながらするときはあります。また、他社がなさっている顧客満足度の調査方法や他業種のやっていらっしゃる手法については、十分参考にさせていただいております。

 それに加えてもう1つ大事なのは、安全文化評価調査というものもやっております。安全文化をつくるためのアンケートですね。


2094




正田:安全文化評価調査。どういったものですか。どんな設問なんですか。


水田:主として安全に対して、どのような意識でやっているかですとか、安全を高めるために自分がどんなことを行っているかとかです。こうした問い掛けに対する答えの中に自分自身の意識だったり、会社全体の風土に関わるようなことが見えてくるということです。


正田:非常に興味深いです。自己評価でいらっしゃるんですよね。


水田:はい。かなりの量の設問ですけれども、結果としましては、経営に近い層と、中間管理職的な人と、一般職という、それぞれのくくりの中で、意識の違いがあるとか、安全に対するとらえ方が違うといったことがあります。例を申しますと、「すごくよくやっています」「こんなに制度を整えて安全を高めています」という意識が強い層がある一方、「そこまでではない」といった層もありますね。そういうことについて、違いがあるということはちゃんと認識しておかなければならないと思います。「できている、できている」と思っているのはやっぱり良くないです(笑)。そういう結果のフィードバックもしています。


河本:そういう調査をやっているのは、やっぱり自分たちがどういう状況にあるかということをきちんと把握して、次につなげていこうという手法として使っているということですね。経営管理指標にもしていますし。スコアを高めていこうというのは、私達も目標としては持っていますけれども、数値ありきというよりも、品質がきちんとしていれば、結果として数値はついてくるだろうという考え方ですね。


正田:そうなんですか。安全文化評価も、これもまたすごく興味深いです。設問が沢山あるとおっしゃいましたが、大体何十問ぐらいですか。


水田:50(問)を超えるぐらいあったのではないかと。


正田:それは多いですねー。


水田:疲れるぐらいあります(笑)。似たような設問を繰り返すというところがありますね。

社員満足度も少し似たような感じです。例えば上司との関係ですとか、そういうふうな設問もあったりしますので、そこからやっぱり意識の違いというのが見てとれたりします。


正田:例えばもしこのお1人のIM(インフライトマネージャー)のもとで、乗務員の方からわるい評価が続いたという場合は、どんなふうに。


水田:1人のIMの下に大体60人ぐらいの客室乗務員がいまして、そこまで細分化したデータは出てこないのですが、課の単位ですとか、部の単位ですと出てまいります。ただ、課や部によって違うというところはなく、管理職またはマネジメント層側の認識と若い人との認識の違いということがあるかもしれません。

 例えば「自由闊達な雰囲気」があるかないかということのとらえ方の違いが、長年指摘されてきているんですけれども、どうしてそういう違いが生じているのかなということを、私達なりに結果をみながら考えたりはしています。

2126



正田:そうですか。自由闊達がない、と。


水田:自由闊達にしていると私たちは思っているんですけど(笑)。


河本:「安全」に関わる部分では規程ですとか、ルールは結構決まっています。業務上そうしなければならない部分がありますので、やはり規程に縛られてしまうところはあります。自由な雰囲気でしようというものの、仕事柄、やはり指揮命令系統ははっきりしているんですね。そうでないと、脱出するときですとか、何か緊急事態が起こったときに、誰が誰に対して指示をするかですとか、誰の監督下に置かれるのかということは、ある意味ルールで決めておかないと、かえって混乱します。そういったことも考えますと、やむを得ない側面もあるのかな、と思いますし、それをあまりネガティブにとらえるのではなく、自分たちの業務の特性として見て行かないといけないのかなとも思います。


正田:やっぱり、規律を守っているお姿というのが私達にはかっこよく映るんですけど。


河本:規律を守ってきちんと仕事をしていることが、航空会社として、公共交通機関として、お客様の安心感につながっていくということは非常に大切だと思っています。それは整備士もそうですし、パイロットもそうですし、空港で働く者、すべてがそこを意識しているところはありますね。


正田:航空業界ということでいえば、例えばサウスウェスト航空さんとか、あるいは今時のLCCさんとかで、自由闊達な雰囲気とか、ポロシャツが制服で、ということをセールスポイントにするところもありますよね。


河本:そうですね。ただ、それらも安全を前提にした中でのことだと思います。個性は、ANAの中にも、LCCの中にもあり、それはどんどん出していけばいいと思います。型にはめるということではなく、ポリシーはしっかり明確にしておかなければならないという意味で、各社のマニュアルであり規程だと思っています。


正田:なるほど。

1688-2


((6)「ゆとり世代」の指導の仕方は に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて





神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

■転換点は2000年―「上位下達」から「逆ピラミッド」の模索
■CAとマネジメントの距離を近く



インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)

ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)






(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

■転換点は2000年―「上意下達」から「逆ピラミッド」の模索



正田:そういった、声掛けをする、関心を持ちあうあり方というのは、ANAではいつごろから始められたんですか。



河本:弊社の中にお客様の声やご意見をお伺いする「CS推進室」という部署があるのですが、その部署が主体となって2000年ぐらいから「エクセレント・サービス・アワード」という表彰制度を取り入れています。客室部門としては2002年の10月からこの「グッドジョブカード(当時はスターカード)」を使った表彰制度を取り入れました。
ただ、グッドジョブカードだけが承認のマネジメントでもないですし、エクセレント・アワードだけがそういうことでもないという意味では、脈々と先輩たちから受け継がれてきた文化ではないかと思っています。


2195



正田:といいますとつい他社様との対比をイメージしてしまうんですが、ANAは何故そのようになったんでしょうか。


水田:例えば私どもの部門の中だけのことを申し上げますと、過去は本当に上意下達といいますか、上から下に対して厳しく指導するという文化がございまして。

2158



正田:あ、やっぱりあったんですねえ。


水田:ありました(笑)。私たちが入社したころは、先輩の言うことにはまったくNOとは言えないぐらい、すべて「はい」という(笑)、そういう文化の中でやってきていたのですが、やはりお客様に身近に接している現場の人達が色んなものを持っていて、その人達の意見をちゃんと取り上げて活かしていくということが、会社にとってもいいサービスができるようになる、ということに気づいたんだと思います。それは競争が厳しいからであり、競争が厳しいという環境を考え、その中でそれをやっていかなければならないということに気づいたということです。

 そのため、ある時期は、組織的にも部長がいて、リーダーがいて、マネージャーがいて、班長がいて、というピラミッド組織を逆にしたんですよ。


河本:逆ピラミッドの組織ですね。


正田:言葉としてはきいたことがあるんですが、実際にできるものなんですか。



■CAとマネジメントの距離を近く



水田:まずは組織図をそういう形に作り替えてみたり、あとは実際にフライトをしているCAが所属しているセクションで、管理職がよりCAに近づけるようにということで、座り方を変えてみたりですとか。デスクの配置ですね。また、近くに来てちょっと座って話ができるようにと、椅子を置いてみたりですとか。フライトをしているCAと、それをみているマネジメントの人達の距離感を近くしようという、そういう時代の流れだったと思います。


正田:それが何年ごろのことですか。


河本:先ほどの話にあった2000年ぐらいですね。競争環境も厳しくなりますし、ANAの会社全体が生き残っていくためには、以前はなかったお客様の声を聞くセクションができたり、そして、形だけではなくて、例えばそのお客様の声として聞いたものを調査をする、顧客満足度調査をする、あとは、それと併せて社員満足度調査をするですとか、そうしたことが少しずつ走り始めていったのと、一体となって進んだと考えていただいていいと思います。

 弊社の行動指針に「お客様の声に徹底的にこだわります」という言葉があります。こういうものを経営の中に取り入れ、お客様の満足、そして従業員の満足が永続的な企業の発展につながるんだという思いを持ち、やってきているということです。

 ですので、繰り返しになりますが、客室(本部)だけでやっているわけではありませんが、ただ、客室はお客様との接点が多いですし、時間も長く、また、やはり航空会社の顔という意味ではブランドの代表ですよという位置づけで、より強い教育だとか、意識をもたせるような取り組みがすすんでいったんだと思います。


2180


応接室に掲示してある経営理念・行動指針




正田:そうしますと特定の創始者の方というのは特にいらっしゃらないわけですね。例えば何代前の社長さんとか。


河本:それはないですね。だれかが作った、というよりもトップマネジメントが、どういう経営をすべきかという中で、組織も整え、こういった制度もつくり、安全に対する取り組みの整備だとか、お客様満足に対する取り組みの整備だとか、全部一緒に進めていったということです。これだけを取り出してやったわけではありません。



1688-2


((4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

■1人ずつの関係を大切に、成長に関心をもって
■上位層にはコーチングを手厚く




インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)

ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)




(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」
■1人ずつの関係を大切に、成長に関心をもって



正田:上司の方の望ましい行動様式や心のあり方をどのように伝えておられますか。


河本:客室乗務員は、先ほども申し上げたように軍隊のような組織形態の中にいますので、それぞれの節目節目で教育などをして、その教育の中で、私たちが大切にする価値観、ブランドのイメージですとか、自分たちの心持ち、スピリットですね、そのようなものを伝えていく、そういった繰り返しですね。

 その中で目にされることもあるかと思うんですが、「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」という言葉をよく使っていますが、私たちの仕事は毎日の繰り返しだけど、1つ1つのことをきちんとやっていこうね、当たり前のことでもしっかり真剣にやろうね、ということを言っています。


2094



正田:そこがおありになるんですね。


河本:大きな組織だけれども、小集団といいますか、小さな単位でみることによって、1人ずつの関係を大切にし、お互いの成長に関心をもって、愛情をもって支援することを大切にしてほしいと言っています。1人ずつの成長過程をその小集団のチームリーダーの人はみてくださいね、マネージャーも自分の範囲のところはしっかり見てくださいね、ということを伝えています。



■上位層にはコーチングを手厚く


正田:今のお話をうかがうとやっぱり凄いなーと思いました。その教育体系のフローチャートのようなものはありますか。


水田:いつ、どんなものを成長段階に応じて教育しているかということですか?


正田:はい。もし構わなければ。


河本:一番最初が基盤形成期です。その次がフライトの中での責任者になるキャリア形成期です。そこから班をもったりしますので、マネージャー、チーフになったり、管理職になっていくということでのステップがあります。そのイメージで節目節目で教育をしています。

その1つずつの教育の内容は細かには出せないんですけれども、節目の教育で特にチームを持つだとか、自分の部下、班員を持つようなメンバーにはコーチングスキルということで、お互い話をするときの引き出し方ですとかを一般的な知識として教えています。

 コーチングはレポートを受け取るところにも使われます。コーチングでよく使われるオープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンがありますが、客室乗務員がフライトから帰ってきたときに、レポートを受け取っていますが、そのときのやりとりの中では、オープンできいていかないといけないと思います。クローズで「どうしてそんなことやったの?」と言ったら、もうそこでシャッターを閉ざしてしまうことになり、それ以上話は進まなくなって、自分のミスを隠そうとしてしまうとか、自分は悪くなかったとか、エクスキューズになってしまいます。ですので、「何があったんですか?」とか「今日のフライトは大変でしたね」というねぎらいの言葉から入って、そこから話を広げるコミュニケーションの取り方は節目の教育の中で入れています。


正田:大事なことですねえ。


河本:コーチングの勉強は大切なことなので、とくに上位層、マネジメントを担う層に厚みがあるような形になっています。


1688-2

((5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断につづく)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

■「承認のマネジメント」とは言っていないけれど―
■3万3千人が使う「グッドジョブカード」




インタビュー登場人物


河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)

ききて:
正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)



(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観
■「承認のマネジメント」とは言っていないけれど―



正田:ANAの承認のマネジメントというと、これまであまり外に出たのを拝見したことがないように思うんですが。


河本:お話をする前に、確認をしなければいけないと思っていたのですが、ANAでは特に「承認のマネジメント」という言葉を使ってはいません。ただマネジメントをする中で、自分たちが大切にしたい価値観ですとか、文化の中で、「ほめる」「お互いを認め合う」「支え合う」「支援する」、そういった言葉を多く使っているというのが現状かと思います。また、こうした人材育成の中でチームを束ねる人達にはコーチングなどの研修を行い、そういう中では、「承認するというのは、ひとつの大切なことですよ」と、言葉としては使っています。


2094



正田:そうですか、それは申し訳ございません。事前にご質問項目を考える上で、そのあたりもちょっと気になっていましたので。


河本:お話する中で合ってくると思うんですけれども、承認をするというのは、認めるとか、お互いのことに関心をもつという意味では、私達も非常に多用しているフレーズですので、そんなに違わないというふうには思います。


正田:ありがとうございます。それではちょっと言葉の部分を柔らかくとらえながら(笑)、そういったものがよく使われるマネジメントといいますか、お仕事の現場というのは実際どんなものなんでしょうか。


河本:あとで少し職場を見学していただければと思いますが、ここからクルーがフライトに行って、飛んで帰ってくる。そういった場面で、現場の客室乗務員とマネージャーたちが、色々接点を持っているわけです。そういった中での声の掛け合い、フライトの中でこういうことがあって、お客様からこういうご意見をいただきましたということであれば、それに対して「ありがとう」とか「良かったね」というような声を掛けていく、というのが日常的にございます。


正田:え、そういうところを見せていただけるんですか。


水田:実際にフライトをしている客室乗務員との接点においては、そういう交流があるということですね。



■3万3千人が使う「グッドジョブカード」


河本:それと、「グッドジョブカード」というものがあり、これをデスクで渡したりする場面を見かけるときもあります。もちろん毎日毎便ではないんですけれども、このような形のものも日々の中でやっています。

(グッドジョブカードを渡す)


2219



ANAのグッドジョブカード


正田:ありがとうございます。


河本:みんなこれを携行していて、お互いの仕事をいいなと思ったら、個々に贈り合うというものです。

 全社的にもこういったグッドジョブカードを運用していまして、こういう承認のマネジメントといいますか、褒めるとかお互いを支援するというのは客室だけではなく、グループ全社員で取り組んでおります。



正田:そうなんですか。凄いことですね。いやいや取ってつけたようにきこえたかもしれませんけれど本当に心から(笑)。



河本:フライトから帰って来たクルーへの声かけですとか、台風などでダイヤが大きく乱れたりしたら、みんなにも大変な勤務をしてもらっていますので、そういうときに「お疲れ様」ですとか、「ご苦労様」というような声を掛ける姿は、どこの職場でもそうだと思いますが、それは日常的にありますね。


正田:先ほど全社員というお言葉が出ましたが、皆様が全社員っておっしゃるときはどのあたりまで、全部で何人の方をおっしゃってるんですか。


河本:現在、ANAで約1万3千人位、グループで約3万3千人です。この羽田空港だけでも何十社もの会社の社員がいて、飛行機1機が飛ぶのにも色んな会社が関わっています。そういう方たちも仲間として、こういうグッドジョブカードをお互い受け渡したりしています。
また、グループ会社でなくても、例えば地方の空港などへ行きますと、その空港で地元の企業に採用されて働いてくださっている方もいらっしゃいますので、その方たちも仲間ですから、もっと広い範囲になるかもしれないですね。


正田:それは羨ましいですね。


1688-2

((3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ


あとがき・石切にて





神戸のコーチング講座 企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―
(1)CAは約6000人の巨大組織

■北京線就航25周年
■6000人を部・課・グループ・班に分割




インタビュー登場人物

河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年より常務取締役執行役員。以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)


2109


2211-2




(1)CAは約6000人の巨大組織

■北京線就航25周年



正田:去年、長直子様より承認大賞に大変素晴らしい応募作品をいただきまして、大賞を授与させていただきました。そのあと寺田まさご様も神戸での表彰式にご来場いただき、お目にかかることができました。ほんとに素晴らしいお二人で。




河本:お二人ともわたくしとは先輩後輩の関係です。現在はANAに籍を置いておられませんが、二人からお話を聞き、今回の場を持たせていただくことになりました。今日は足をお運びいただき、ありがとうございます。

2195



正田:ありがとうございます。実際にお会いしてやっぱり素敵な方々で、どぎまぎしております。

(一同笑)

正田:私自身も個人的にANAとはご縁がございまして、20数年前の中国語学科の学生時代にANAが北京線就航される直前に、当時の成田の事業所で客室乗務員(以下「CA」と略)の皆様に中国語を教えるというお仕事をしたことがございます。その時びっくりしましたのが、客室乗務員の皆様はわたくしが学生だということをご存知でいらしたはずなんですが、大変皆さんお優しくいい生徒さんでいらして。意地悪をされるということなどは全然なく。ああ素敵な方々だなあと思ったおぼえがあります。

CAさんの世界、それまでご縁がなくTVドラマで拝見するぐらいで、ばちっとお化粧をきめて綺麗な方々、でもちょっと冷たい雰囲気を漂わせて、というイメージだったんですが(笑)、イメージを一新したおぼえがあります。


河本:ちょうど今年が日中国交正常化40周年、また、弊社便の北京線就航25周年ということで、色々と盛り上げていこうとしているところですが、そのまさに就航当初お世話になったということですね。わたくしもどこかで生徒として習ったかもしれません。

今は上海にCAのベースも作って、現地採用のCAも増やしていく中で、機内での言語対応力の向上にも取り組んでいるところです。


正田:その後長(直子)さんからも、承認大賞のエピソード以外にも沢山の御社での先輩後輩のやりとりのお話を伺わせていただき、腑に落ちました。そういうことの積み重ねが、ANAファンの方が言われる柔らかい優しいサービスにつながっているんだな、と。


河本:ありがとうございます。過分なお言葉で。


■6000人を部・課・グループ・班に分割



 
ここで、ANAの会社組織全体、また、全社と客室本部の関係について簡単にご説明をいただきました。

 まず、どのような会社にでもある総務部や人事部、広報室といった本社組織。
 そして、販売計画を行う部署と併せ、世界・日本各地に配置されている営業支店を含めた販売部門。
 また、貨物事業については「貨物事業室」という組織があります。
 そして、空港に目を移せば、各空港における業務を含めたオペレーションを司る「オペレーション統括本部」。
 このほか「整備本部」、パイロットの所属する「運航本部」、そしてCAが属する「客室本部」があります。
 「客室本部」は、本社で5000人、グループ会社も含めると、6000人近いCAがいる巨大組織です。
 
 その客室本部の組織の中はというと…。

 安全をはじめとしてサービスや様々な業務手順・規程関連を司る部署、訓練や教育の企画・実施を担当する部署、そして、ANAとしては5千数百名のCAが所属する「乗務部」という組織があります。「乗務部」は3部に分かれており、また、各部の中にそれぞれ3つの課があります。加えて、大阪をベースとする三百数十名のCAが所属する課もあります。このほか上海、ロンドン、また、最近では韓国と台湾も含め、これらそれぞれをベースとするCAがいます。


 次に、乗務部の中をさらに詳しくご説明いただきました。

各課にリーダーと呼ばれる者がいて、これが一般的に言う課長です。ただ、課と言っても、かなりの大所帯ですので、課の中を6から8の「グループ」に分け、そして、さらにその中に7つから8つの「班」を設けています。

 リーダーがいて、その下にIM(インフライト・マネージャー)という役職の者がおり、その者が1つの課の中に6から8ある「グループ」を統括しています。そして、最小単位である「班」をまとめる、いわゆる班長がTC(チーム・コーディネーター)という者になります。




河本:わかりやすく言えば「軍隊組織」的なところがありますね、ある意味(笑)。小チームがあって、そのチームを束ねるグループがあって、またそのグループを束ねる課があって、そして部があって、という階層になっています。


正田:「承認大賞」のエピソードの当時でいうと、寺田まさごさんがいらして、長さんがその下にいらして、という感じですか。


河本:その当時はたぶん、寺田さんはIMで、長さんはその中の班員だったと思います。班の中の一員である長さんを寺田さんが推薦してインストラクターに、ということだったと思います。



その巨大組織の中で働いている5000人のCAは、どうか。
「現在では34,5歳というところの人数が多い構成になっています。」(ANA客室本部)とのこと。「やはり女性ということもありますので、会社の中のキャリアと併せて、個人の生活環境と言いますか、結婚や出産・育児をきっかけに退職したり、休職したりする者が多いという状況です。ただ、会社としても女性として働きやすい環境を整えていますので、退職ではなく休職を選択して、引き続き乗務に復帰する者も昔に比べると増えてきています。」(同)




河本:とにかく大きな組織ですので、班単位にまで細分化しながら運営をしているというのが実情です。それを前提にお話を聞いていただけると、わかりやすくなると思います。


1688-2


((2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―


プロローグ:「承認大賞」から生まれたインタビュー


「あなたなら大丈夫。若いうちに経験したことを、いつかこの部署に戻ってきて活かしてくれると信じています」

 昨年、ある女性マネージャーの「期待の言葉」が当協会主催のイベント「承認大賞2011プロジェクト」の部下部門の中で、審査員の得票を集めました。

 これは、20年も前の全日本空輸株式会社(ANA)で、当時の客室乗務員(CA)同士の上司から部下へ発した言葉。

 その詳しい背景などは、こちらのページをご覧ください:

「あなたなら大丈夫。若いうちに経験したことを、いつかこの部署に戻ってきて活かしてくれると信じています」長 直子さん(女性、商社関連会社勤務、管理職。44歳)

http://blog.livedoor.jp/officesherpa/archives/51768319.html

「承認大賞2011プロジェクト」 http://shounintaishou.jp



 応募した当時の「部下」、長直子さん(現商社関連会社勤務)は、見事、大賞に輝きました。
 そして当時の「上司」こと寺田まさごさん(現会社経営)も、昨年秋三宮で行われた表彰式にサプライズで来ていただき、元上司―部下のめでたい2ショット、と相成りました。
 

1 長氏&寺田氏

 

 受賞の言葉に人柄がそのまま表れているような、「たおやか」な女性上司の寺田さんと、その横でいつになく少女のような表情の長直子さん。

 
 ところで長さんによると、「承認」の言葉というのは当時のANAの中で珍しくはなかったようなのです。日ごろから上司―部下、先輩―後輩の間で日常的にそうした温かい会話が交わされていた。さらに、ミスしても人を責めずシステムを変える、といった「システム思考」的な風土もあった、といったお話も伺いました。

「承認の温かさ、ありがたさはその後も私の基軸となっています」と、長さん。

「非常に興味ぶかいですね。どうしてそういう風土を維持できるのか、ぜひ一度、現在のANAの方からもお話を伺ってみたいです」
と私。

 そこで長さんから今回インタビューさせていただいた、河本宏子・客室本部長(当時。2014年4月より常務取締役執行役員)をご紹介いただいた、という次第。

 お忙しい方だと伺っていましたので、本当に恐る恐るメールをお出ししたところ、客室本部のかたから「インタビューOK」のお返事をいただいたときはどんなに嬉しかったことか。

 今回のインタビューは、今年7月10日、羽田空港近くのANAオフィスで行われました。ここに登場される河本氏、水田氏それにANA客室本部、広報室の各ご担当のかたにはお忙しい中、大変にお世話になりました。


それでは、次の記事からその模様をご紹介いたします―。



ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp

 フェイスブック上の畏友、瓜生原葉子さん。製薬会社勤務中、移植医療に必要な免疫抑制剤の開発に携わったことをきっかけに、移植医療の普及に取り組むように。

 神戸に在住の同世代の聡明な女性です。


 その瓜生原さんの力作、『医療の組織イノベーション プロフェッショナリズムが移植医療を動かす』(中央経済社)を、年末のお約束を果たしてやっと読むことができました。


「移植」を題材にしていますが、結論部分は目からウロコ。どんな種類の「プロ」にも、当てはまるお話かもしれません。


 本書によると、世界でもっとも臓器提供者数の多い国はスペインで、2010年に人口百万人当たり34.7人。対するわが国は同0.9人。

 今も年間4000人ほどの移植適応の患者が心臓や肝臓の移植を受けられずに亡くなり、
また一時期盛んに行われた海外での移植の道も絶たれ(2008年「臓器取引と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言」)、日本国内での臓器提供を増やさざるを得ない状況にあります。


 
・・・なんて、ご都合主義のようですが、「生きたい」あるいは「わが子を生かしてやりたい」という切なる願いのもとに海外渡航する人たち、またそれを見る現地諸国の視線が年々冷たくなっていた状況、は、当事者の切実さと裏腹に近年あまり報道されなくなっていただけで、本当はかけがえのない「人の命」に関する問題なのです。
 日本では「他人の臓器をあてにする」一見ご都合主義的な姿ばかりがクローズアップされ誤解を生んできたように思います。



 本書では、欧州23か国に質問紙を配布し臓器提供増の取り組みについて尋ねています。

 臓器提供者数を増やすことは欧州各国で国家戦略として取り組まれ、中でもカギを握るのはドナー病院に常駐する院内移植コーディネーター(院内Co.)の存在。


 この人たちが、ドナー家族への手厚いグリーフケアとともに臓器提供を意思表示してもらうことができるかどうかがカギを握ることになります。


 なので院内Co.のトレーニングをし、この人たちがいかに高いレベルの仕事をするか、いわば院内Co.のプロフェッショナリズムが本書の後半の主題です。


 本書は先行研究を丁寧に踏まえながら、まずプロフェッションとは、

…拘間の教育訓練による体系的な知識・技術を習得している。
∪賁膺Χ判乎弔存在している。
N冤規定が確立している。
だ賁臉が保証されている

と定義。


 そしてプロフェッショナリズムの5つの次元を

.廛蹈侫Д奪轡腑淵訌反イ鮗分の行動規範としている。(The use of the professional organization as a major reference)
公職であるとの信念(A belief in service to the public)
自己規制の信念(Belief in self regulation)
だ賁臺野での召命感(A sense of calling to the field)―「天に呼ばれている」みたいな感じだろうか
ゼ律性(Autonomy)

とします。


 これを院内Co.の場合にあてはめると、この5次元が
‖遽枩の追求(Pursuit of excellence)
⊆己規制(Self-regulation)
職務への献身(Devotion to the job)
だ嫐(Responsibility)
ゼ匆馘責任(Social responsibility)

になります。


 さて、こうしたプロフェッショナリズムを「育てる」要素とは、移植コーディネーターの場合、なにか。


 分析の結果、
・(臓器提供者数を増やそうという)国家方針の浸透
・自律性
・結果のフィードバック
・医療スタッフへの教育
・同僚からの承認

などが、有意な正の相関を示しました。
 
 ・・・でた、承認。


 そしてわが日本での現状はというと、
他の諸国と比べて、
成果変数である・臓器提供率、・家族からの提供承諾率、・職務満足度、・職務への誇り、
すべてにおいて、統計学的有意に低い結果。

 「卓越性の追求の醸成」つまりプロ精神を育てるような組織の諸施策に関しては、
・国家方針の浸透
・結果のフィードバック
・医療スタッフへの教育
・同僚からの承認
 
 いずれも、他の国々より低い結果。

 ただ、学会への参加、継続教育の機会といった外的要因は高いのです。

 
 「レベルの高いプロのコーディネーター」を育てるのに今後必要なのは、仕事結果のフィードバックや同僚からの承認といった、人間臭い病院組織内の取り組みであるといえそうです。


「院内Co.は病院内で元々の職務と兼業しているが、・・・その職務を全うしようとすると、周囲に負荷をかけてしまうことがある。いつも同僚に負い目を感じて活動している場合が多いため、一般社会にではなく、まず、同僚から認めてもらいたいという気持ちが強い。したがって、組織がその機会をつくり、人を認め合う組織文化を醸成することは大変重要である」(p.259、太字正田)


「一般的に、医療専門職のプロフェッショナリズムを醸成するための要件として教育機会が挙げられる。もちろんこれは必須の施策ではあるが、プロフェッショナル達は、より内的なものを求めており、特に自分の仕事結果や価値を同僚から認めて欲しい(承認:recognition)と望んでいることが明らかとなった。実際、周囲から認められていると感じるほど、高いプロフェッショナリズムを維持できていた。」(p.279、同)


 そう・・・ここにも出てくる、「認められたい」人々の姿。それは決して「未熟な自我、自己愛による承認欲求」といった子どもっぽいものではなく、人の命を救う専門職に献身的に打ち込み、より高い仕事を目指すからこそ「認められる」ことを糧としたい、というピュアなベクトルであります。


 看護職における「承認」の研究としては太田肇『承認とモチベーション』(2011年)があります。ここでは、同僚からだけでなく、専門職の専門性を熟知している「上司」からの承認の重要性が挙げられていました。(院内Co.の場合院内に同業の上司がいないかもしれません)


 
 わたしたちがより良い仕事をするために。そして良い仕事の結果人の世の喜びがより増えるように。


 そろそろ、「承認」に大きな一歩を踏み出しませんか。


 
 瓜生原氏の骨太の労作をたたえつつ。



神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
 

2日夜、よのなかカフェ「日本の企業をつながり力で変える!」を開催しました。

4154



 冒頭、正田からお話。

4253


 このブログを長く読まれている方だと、ほぼストーリーの想像がついていただけると思いますが・・・


「人材育成の不幸な20年」「幸せの感じ方のちがい」「労働生産性、チームワークは危機的状況」「つながりの良い面と悪い面」「不安マネジメントがつねに必要な日本人」「承認中心のコーチングが目指しているもの」「現実に起こったモデル」「承認コーチング企業改革で起きること」

などを手短にお話・・・ (しかし、10分のつもりが30分に)


このなかで、(ブログで既出ですが)日本人とアメリカ人の気質的、器質的ちがいを取り上げ、

「こうした(社会心理学・分子生物学上の)研究は1990年代後半から盛んに出ているのに、何故か人材育成業界ではこれをベースに議論していない」

と問題提起しました。

4236



このあと参加者の皆さんの自己紹介とディスカッション。

「承認中心のコーチング」で手ごたえを感じ、

「自分はバブル期に入社し、面白いように商品が売れたいい時代を知っている。今の若い子に同じ思いを味わわせてやりたい」
「次世代リーダーを作らなければと感じている」

と語るミドルの方。


「これまで放任でありすぎたと感じた。みんなが一丸となって同じ方向を目指すコーチングを社内に取り入れていきたい」

と語る人事担当の方。


4235



「今、こういうことで悩んでいます」

と語る会社役員の方。

同様の経験をした方からのアドバイスなどがありました。

4218


4216



「ぼくたち教師は 今何が必要なの? 学びとは何か 育つとは何か ということを教えてあげたほうがいいんじゃないか 学びは手段ではなく目的ではないのか」と語る高校教諭の方。


4206



「日本人の特性を解説してもらい、なるほどと感じた。
ただ当社は10人くらいの会社なので、背中を見せるぐらいしかできなくて・・・」

と語る広告業の方。

カフェでは語られませんでしたが企業の規模によっても業種によっても、人材育成のあり方は変わってくるでしょう。
「背中を見せる」という形のOJTあるいはモデリングが中心となる、というのもいいのではないでしょうか。


4167



雪も舞う神戸の2月の夜。寒い中をご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!


ファシリテーター山口裕史さん、カメラ&UST担当山口元子さん、そして会場のアロアロ白石さんにも
改めてお礼申し上げます。


次回は3月1日(木)19:00〜より、
「3・11が私たちに残したもの」(仮題)

会場アロアロにて行います。


神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp



・・・それから、性格の悪い正田は
このところふっかけられた議論、異論について
回答する資料を今回の手元資料の末尾につけておきました

もしこの資料をご覧になりたい方はメールinfo@c-c-a.jpまでご請求ください。


 これを言うとびっくりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、


 NPO法人企業内コーチ育成協会の前身の任意団体、企業内コーチ育成団体コーチング・リーダーズ・スクエア(CLS)の、初代の顧問は、故鬼塚喜八郎・(株)アシックス元会長でした。


 
 不思議なご縁で、当団体の意図していること、育成してきた人物像、成果などをお話すると、顧問就任を快諾してくださったのです。



 鬼塚会長は、2006年のCLS主催のイベント「コーチング関西」の午前の部に基調講演され、そのあと午後の部も残って企業内コーチたちによるパネルディスカッションまでご覧になり、


「コーチングはわれわれの若い頃にはなかったが、素晴らしいものですね。感動しました!」


 と、言っていただいたのでした。



 教え子がほめられ正田はまたウルウル〜♪



 その当時から、「コーチング」といってもアメリカ生まれの「コーチング」に少し違和感をもち、


 日本人本来の良さである誠実さや思いやりをベースにしたもの、また武士道精神のような倫理性を加味したものを志向していたのでした。


 武田建・関学名誉教授のいわば「古武術のようなコーチング」を講座プログラムに取り入れているのもそれがありますし、

 現顧問である太田肇・同志社大学教授の提唱される「承認論」も、太田教授のオリジナルで、「日本発の組織論」として各国語に翻訳されています。



 また、現実に企業内コーチたちはそれで「異常値」とも呼べるような成果を挙げてしまっているのでした。



 思い切って、自分たちのやっていることを「コーチング」と呼ぶのをやめ、「企業内コーチ育成」と、よぶことにしたいと思います。


(もちろん、中身のコア技術は「コーチング」というコミュニケーション手法で間違いないです。しかも「コーチング」としても非常に正統的な「コーチング」をやっています。検索で「コーチング」でもヒットするように工夫したいと思いますが…、)



 「企業内コーチ育成」にはどんな特徴があるかといいますと、
 

■日本人の標準的な人格モデルに合ったもの。具体的には「承認」のスキルが大きなウエートを占める

■自分に厳しく、他人に寛容に という、日本古来のリーダー像に合ったものである。リーダーは自制的でなければならない。

■ある程度しっかりしたスキル習得が必要。研修の時間数や継続性、期間がカギ



 高い要求をしているようですが、実際にはこのやり方で習得し、「企業内コーチ」になっていただいたとき、日々の現実の事象に効果的に働きかけをし、プラスの変化を起こすことができるので、ご本人も「楽しい」ようです。


 中途半端な研修で、

「なあんだ、コーチングなんてセミナーだけのもので、有効じゃないじゃないか」

と、がっかりさせるよりも、相手の人生を本当に思いやっているといえると思います。

 だってこれに代替する手法というのは残念ながらないですから…。


 先日は、受講生さんからのメールで

「部下から『あのとき涙が出そうになりました』と感謝されました。正田さんのエネルギー源はこれなんですね」


 とあり、ああ少し受講生さんも幸せになってもらった、とまた嬉しかった正田でした。



 当協会では1日研修はしていません。1日でコーチングの(当協会でいう基礎コースAの)傾聴・承認・質問といった基本スキルを伝えたとき、色々と好ましくないクレームや問題につながりやすいようです。


 非営利団体をしていますと、色んなことが耳に入ってきます。
 あまりネガティブなことは書きたくないので詳述はしません。


 
 せっかく非営利で教育事業をしている、なんのためにしているんだ、と問いなおしたとき、社会的責任としてお客様の利益になることをやっていきたいのです。



 
神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp 


 


 当協会でPJ(?)が進行中。


 過去の受講生さんに、「承認」の事例を提出してもらい、それをNPOの役員・社員が審査して最多得票のものに賞を出す、というもの。

 今年は、準備期間もないので内輪で行い、「第0回承認大賞」と名づけました。



 どれが「大賞」かは、実はどうでもいいんです。


 集まった9本の応募作(事例)は、どれもしみじみ心を打つもの。

 職場を舞台に、上司と部下、しっかりと向き合って言葉を発します。
 相手の成長を心から願った言葉を。


 また、言葉単体が問題なのではなくて、その言葉が相手の心にきちんと届くには、

(届いたかどうかは、相手のその後の「行動変化」でみるのですが)

 言葉の発し手である上司の人となりがきちんと信頼されていることが必要。上司の「在り方」も、問われています。


 そんなこんなも含め、


 過去の某首相ではありませんが、

「感動した!!」

なのです。



 実は、正田はいつも「コーチング講座・基礎コースA」を開催すると、必ず受講生さんに宿題をお出ししているので、「承認」の実践例をみるのは珍しくありません。


 でも、感激屋の私は毎回胸がふるえるような(大げさかな)感動をおぼえます。で、思い切りほめるコメントを書いてお返ししています。



 今回、「大賞」をちょっと権威あるものにするため、顧問の太田肇教授に審査委員長になっていただき、

 またNPOの役員・社員全13名の皆さんにも審査のための「投票」をよびかけました。

 (ちょっとうるさいぐらいに。きのう1日で呼びかけメールを3通書きました。すみません^^)


 なんでそんなにうるさく言ったかと言いますと、

 皆さんにいっしょに感動してほしかったからであります。


 もちろん、「感動してください」なんてこちらから言わないし、
残念ながらこれまでどなたも「感動しました」なんてコメントを書いてきてはいません。


 でも、中の何人かのかたは感動されたんじゃないかなって思う。


 人生の半ばを迎え、上にも下にも人との関係と責任が張り巡らされている、そんな立場を共有する人たちがこんなに人を思い、奮闘している。


 それは彼らがそういうふうに生きるだけの資格を持ったからです。単純にコーチング講座が介入しただけではない、それだけの人生の厚みをもった人たちだからです。


 
 教育とは、押しつけだ。


 楽しい「押しつけ」のために、「賞」をつくります。




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
 

  
 


 21日に東京で行われた日本コーチ協会大会Coaching 2009のご報告 第一弾。


「職場のメンタル問題とメンタルタフネス経営」by渡部卓氏。


「今は大うつ時代と言っていいのです」と渡部氏。


 大卒の1年以内離職の5人に1人はうつ病か適応障害。

「仕事でストレスを感じている」人は就労人口の72%。


 就業者6400万人のうち「うつ」で業務能率の悪化は1〜2千万人にみられ、業務上のミス、判断ミス、ケガ、事故は4〜600万人に、また「うつ」が原因の退職、休職、休暇は80〜120万人に。


 自殺は年間3万2千人。対して交通事故死は5千人。


 「職場うつは発生対応、医療対応だけでは解決しない」と、渡部氏は言います。「発生対応だけでいいという会社は良くなりません」


 予防がもっとも安価で効果的だがもっとも日本は遅れている、とも。



 現在はハラスメント研修の依頼がもっとも多い、という渡部氏は、やはり「上司の役割」についても言及します。


 「モチベーションブレーカー」の例として、

■ミスばかり指摘して誉めないタイプ。

■部下の相談を抱え込む上司のタイプ。
 ○飲むことだけで正面からコミュニケーションが出来ないタイプ。

■休みを取らない長時間残業に無頓着なタイプ。
 ●朝早く、遅くまでいるタイプ。
 ●アフター5・休日を無視するタイプ。

■ナルシストのタイプと有能すぎるタイプ。

■部下の賞賛をモチベーションにしている上司タイプは部下に関心がない。

■数字に出せとすぐに言う上司のタイプ。

■成功体験、昔の話ばかりのタイプ。

■ビジョンや戦略の話ばかりが好きなタイプ。

■部下に任せて、責任を取る気がない上司のタイプ。


・・・を、挙げます。



「予防が大事」。


 さて、効果的な予防とは、この場合なんでしょうか…1つではありません…






 セミナー後、正田はちゃっかり渡部氏とお名刺交換。


 「今日はいいお話をありがとうございました。神戸で『承認』を核にしたコーチングの普及活動をしています」


 「ああ、『承認』はすごく大事ですね」



 
神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
 
 


 


 先日、このブログで『職場は感情で変わる』(高橋克徳著)のことを取り上げていて

(「内省にぐっと来る」の記事参照)


 そのとき書きもらしたことに気がつきました。



 この本は沢山の知見を盛り込んで、いい本です。

 ただ、「感情は大事だ」ということを強調すると、それもまた色々弊害のもとになる、ということも見てきましたので、言わなければなりません。



 脳は「感情系優位」になると、だらしなくなる、という現象であります。



 この「感情系優位」という用語は、『脳が冴える15の習慣』などの著者、築山節氏がつかっているので、どれくらい普遍性があるのかわかりませんが、


 『フリーズする脳』でかなり言及されていました。ご興味のある方はご参照ください。


 感情は、たしかに動物である人間のすべての行動のもとで、それを無視するわけにはゆかない。ただし、1人1人が感情本位で動くと、組織というか2人以上の人はすべて「ばらばら」になります。


 人には、面倒なことは回避したい、規則は束縛だと感じる、きらいな人とは話したくない、といった、原始的な欲求があります。


 「感情は大事だ」というとき、残念ながら立派な感情ばかりでなく、それらが出てきてしまいます。

 必要な行動をとらずに、言い訳ばかりする、そしてリーダーには「ぼくのモチベーションを上げてよ」と過大な期待をする、

 そんな厄介な人をつくってしまいかねない。



 …私は仕事柄、というか旧コーチング・リーダーズ・スクエア(CLS)を主宰しながら、

「感情は大事だ」と強調するタイプの研修を受けてきた人がその後どんな行動パターンになったか、人一倍多くみてきてしまったので…



 「モチベーション低下」というと、リーダーシップとか職場環境の問題のようにこれまでは考えられていましたが、


 そういった奇妙な教育研修由来の、いわば自業自得型のモチベーション低下もあるようなのです。


 
 そうした人は、いわば社会人としての基礎が根底から崩れてしまった人です。

 だれに対してもへだてなく挨拶する、必要な行動は「すぐやる」、相手がだれであれ報・連・相をちゃんとする、といったことは、好むと好まざるとにかかわらずやるように、社会人のはじめに教育されたものです。


 それらは、会社組織が成り立つために、あるいはその個人が最低限の社会人として周囲から認められるように、絶対必要なことなのですが、


 そこが崩れてしまった人は、もういちど新人教育と同じ手間をかけて再教育しないといけない。


 それを受け入れられない人は、残念ながらどこの会社でも通用せず、ジプシーになっていくでしょう。


 教育の責任ということを痛感せざるを得ません。




 
 先日パーティーで会った友人から言われた嬉しい言葉。

 忘れたくなかったので、書いておきましょう。


「正田さんが言うと、『承認』はきれいごとでなく真実にきこえる。僕は正田さんから『承認』を教わって、良かった。」




神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
 


永遠の学びの世界、というものの存在を、このブログの読者の皆様は信じていただけるでしょうか。


旧CLS副代表を務め、今もNPO法人企業内コーチ育成協会の理事に就任したO氏。


私にとっては気心知れた「盟友」なのですが、かれが先日、「コーチング講座基礎コースB」に参加しました。



コーチング学習歴6年以上のO氏にとって、傾聴・承認・質問の「基礎A」の内容は、ほぼ体に染みついたお手のもの。日々、部下とのやりとりで使いこなしています。


もっとも、専門は経理であり、経営診断のような分野の勉強もし、決してコーチング一筋というわけではない。朝10時からほぼ日付が変わるまでの間、人材派遣会社の役員・マネージャーとして過ごし、部下の相談に乗ったり自分で資料作りしたり証券会社や監査法人とつきあったり、会議に出たりということをしています。

そういう毎日なのですが、「自分のベースはコーチング」というかれの確信は不思議と揺るがず、こうしてNPOの理事に返り咲いたり講座に出たりしているわけですが…、


そのO氏、「アサーション・フィードバック・叱り・強み発見・その他」という、当協会の基礎コースBに出席して言ったのが、

「ああ、新しい勉強をしました。

また、自分ではできてると思っていたところが弱ってきているのもわかりました。改めて勉強して良かったです」


O氏はもともとポジティブで、「貢献」に価値を置く、ソーシャルスタイルでいうとPとFの複合かなという性格なのですが、

(そういう性格でもないと正田と長年歩調を合わせられない?)


「承認」を比較的得意とする代わり、ネガティブな指摘をする、「フィードバック」や「叱り」などはどちらかというと苦手。


今回「基礎B」の受講で、「自分はフィードバックが苦手なんだとわかりました」と発言。

ただし、部下でこのところ成長に足踏みして十合目のうち二合目あたりで止まっていた女性には、

「まだ二合目だよ」

というフィードバックを最近かなり強くやり、

その後彼女は再度、十合目を目指すイメージを持つようになってきた、といいます。



そのあたりのもろもろの感覚について、O氏いわく

「今もコーチングは日々使っている。

この瞬間はこのスキル、次の瞬間はあのスキル、と無意識に使っている部分があるし、

うまくいかなかったケースをふりかえると、『あ、あのスキルを使ってなかったからだよな』と気づいたりする。

今回久しぶりの講座でまだ知らない、できてないスキルがあることがわかった。

また、できてると思っていたスキルも弱っている部分があった。

ずっと続く学びですね、これは」




たぶんそれは正直な言葉なのでしょう。


脅したいわけではないけれど、

コーチングをやめてしまうといきなり業績も下がるのも経験ずみ。

スポーツのようなもので、常に磨きつづけていないと落ちてしまうのでした。


O氏は、コーチングの専門家でなく、現場密着で、
「自分の最優先は(役員の)仕事」と言い切りながら、
6年にわたって地道にコーチングをやり続けるといううえにおいて、

私にとっては尊敬する友人なのでした。


そして今回また、

褒める・認める・叱る が人を伸ばすうえで有効とわかったうえで、

それを一つの人格に集約してやり続ける企業内コーチってどうよ、

と思いはまたそこに行くのでした。


「脳にいい人の育て方」などは、ハウツーとして出回っています。

でもそれを現実にやり続けることができるのはどんな人格の持ち主なのか。


ハウツーを切り売りして、「さあ、やれ」というのは本当に人道的なのか

…なんていう書き方をすると、また正田は戦闘的で、とお叱りを受けそうなのですが。

このページのトップヘ