「第一回承認大賞」、
前にも書きましたが今回の選考は大変でした。
いずれも、お手本にしたいような素晴らしい「承認」の実践事例ばかり。
上司の方の真剣さや温かさ、部下の方の成長や喜びが伝わってくるものばかりです。
ほんとうは賞をお出しするような「序列」をつけること自体、馴染まないんだけどな〜。
とはいえ、やはり「大賞」と名のつくものは不思議とインパクトあるものです。
それと去年、賞をお送りしたときの上司の方々の喜びようといったら…
「いやぁ、表彰なんて子どもの時以来ですけど、嬉しいものですねぇ」
なんて、言ってくださるんで。
心を鬼にして、今年も「選考」をさせていただきました。
9月27日〜10月3日、わたしどもNPOの社員・役員12名がWEBアンケートで投票。
この得点を参考に、10月8日、同志社大学の太田肇研究室で二次審査をしました。
以下、各事例の表彰ポイントをご紹介したいと思います。
【上司部門】
大賞1 annieさんの事例:
―ものづくり企業の研究開発という、日本経済の生き残りのカギを握るといってもいい分野。そこでの人材育成、世代交代について明るい道筋を示してくれる。
―「上司からの問いかけ、引き出し、行動の提案」⇒「部下の行動」⇒「手ごたえ」⇒「上司の承認」⇒「自信」⇒「再度の行動」⇒「さらなる手ごたえ、確信」と、非常にきれいなサイクルになっている。上司はこのように部下の行動促進に関わることができる。
―上司からの働きかけを受けて、活き活きと弾むように行動する部下の姿が爽やか。よい上司の下で働くと、仕事が楽しいということを示す典型的な事例。
大賞2 大里雄一さんの事例:
―入社10年目でやる気を見せない女性社員。実は、男女の役割が固定化しがちな中小企業でこういう人は多いのでは。それに辛抱強く上司が関わり、本人の当事者意識を引き出している。女性活用の好事例。
―「外部に出し、発言させる」は、「承認」の中でも言葉によらない行為の領域で、見過ごされがちだが、重要な働きをする。ここではそれが効果を挙げていることが評価された。
―大里さんからの親身な言葉がけの数々も重要な評価ポイント。
―最後、他社の社内活性化事例を学んできて「自社でも勉強会が必要です」というようになった。目を見張るような一人の人の変化。
―欲を言えば次の段階、この人を戦略的に戦力として活用する道を考えてほしい。
NPO法人企業内コーチ育成協会賞 「恥ずかしがり屋なもので…」さんの事例
―きちんとやりたい気持ちが空回りして混乱しやすく悩みやすい若い女性。口で言っても伝わらないことでメモを残した、というところに、女性上司の優しさときめ細かさがあふれている。
―「等身大のあなたでいい」は、短いけれども大切な存在承認。自分の存在そのものが受け入れられている、認められていると感じた部下が、混乱が減り優先順位をつけられるようになったとは素晴らしい。
―2人しかいない小さな職場。仕事量の調節も思うに任せないことも多いだろうが、ちょっとした思いやりの言葉が嬉しい。
審査委員長賞 永井博之さんの事例
―「目つきが悪く成績も悪く周囲から浮いている」と、いいところのなかった部下。普段は課長が見ているということだが、ここでは部長の永井さんが出ていって、まず「名前を呼び、挨拶する」ところからスタートした。これも重要な存在承認。
―思い切って営業同行してみたところ、良い所が発見できた。「思い切り」がカギになったかも。やはり、何が起きているかわからないとき、上司の方から歩み寄ってみることは大事。
―プラスの言葉がけをしたあと、それが口先だけではない証に、職場のみんなの前で紹介し、本人にも発言させている。これが効を奏した。いくつかのプラスの働きかけがうまく相乗効果を発揮している。
―「顔の肌ツヤが良くなった」などの観察も素晴らしい。モチベーションが上がってくると、確かに顔色が良くなる。これは、発言や行動が変わる前の段階の観察可能な変化。
【部下部門】
大賞 「万年青年教師」さんの事例
―苦悩の極みにある後輩教師に、他校の校長先生がわざわざ訪ねてきて激励していることが素晴らしい。
―あれもこれもやった、万策尽きた、という状態の人に、一切アドバイスを加えず、ただ「あなたはよくやっている」と「承認」に徹して励ましている。こういう場合に年長の人は、往々にしてアドバイスを与えたくなるもの。単なる「承認」に徹したところが、この校長先生の豊かな人生経験と温かい人柄を感じさせる。
―応募者はこの言葉を機に、辞めたいほどの苦悩から立ち直り、生徒と行動をともにし家庭訪問を繰り返した、とある。的確に人の心をつかんだ「承認」は、人の傷を癒し行動にまで駆り立てる力がある。
―校長先生はこの翌年亡くなった、とある。しみじみと、ある世代の人の持っていた人間力を感じさせる事例。
準大賞「ターニング・ポイント」さんの事例
―全国一厳しいと評判だったという名物部長さんの一言。一生に一度の褒め言葉かもしれないが、それだけに重みを感じさせる。
―「お前なら当然やな」ほかの人に聞こえないように静かに言う、というところがポイントかも。作為的ではなく、その人として精一杯の承認をされている。
―このあと応募者の人生を変えた、人材育成にシフトするきっかけになった一言。20年もその人の中に生きているところがすごい。
代表理事賞 岡田悦夫さんの事例
―「叱った」事例を承認と認めるべきかと審査では異論もあったが、一次審査で票こそ少ないものの熱いメッセージを集めた。
―相手の強さを信じての厳しい一言。応募者はこの一言をきっかけに仕事の姿勢が変わり、何事も丁寧にやり抜くようになったという。やはりこれも承認と認めるべきでは。
―叱れる若い管理者が少なくなったと言われる時代。34年前の事例をお手本にできるかどうかはわからないが、人の心に深い前向きな余韻を残す「叱り」もあるのだということを示す事例。
このほか
1962_tigerさんの事例は、私(正田)が個人的にとても賞をお出ししたかった事例でした。残念ながら選にもれてしまいましたが、応募者(上司)の熱い語りかけが、頼りない部下の心に沁み込むようすが伝わります。この事例の応募のあと、応募者は職場を替わられ(同じグループ内での異動)、この部下とも離れ離れになりましたが、そのときのメールのやりとり(未公開)も、とても心を打つものでした。
としくんさんの事例は、上司部下とも時間に追われてせっぱ詰まった状態の中で、上司が出した効果的なIメッセージ。これもとても賞をお出ししたかったのですが…、(「とっさのひとこと賞」など?)マネジメントは、答えのない難問の連続が普通のこと。「きれいな事例」とは言えませんが、それがむしろマネジメントらしいとも言えます。
「マネージャーの言葉は、どんな言葉でもマネジメントだ」と言ったのは、ミンツバーグでしたでしょうか…
N.Aさんの事例は、優秀な女性部下に対し感謝とともにさらなる要望を伝えたところ、期待以上の仕事をしてくれた、という事例。育成というよりは「交渉術」のようなものかもしれません。「承認」は、使いでのあるスキルです。応募者の謹厳な人柄を存じ上げているだけに、想像して笑みがうかびます。
橋尾ちさとさんの事例は、てきぱきした聡明な女性上司。すべてにおいて答えをもっていそうな方だけれど、「遠慮は無用」という言葉を繰り返すことによって、部下から意見を引き出しています。橋尾さんにチャレンジする勇気と自信を与えてくれたこの言葉、さすがですね!
神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp
前にも書きましたが今回の選考は大変でした。
いずれも、お手本にしたいような素晴らしい「承認」の実践事例ばかり。
上司の方の真剣さや温かさ、部下の方の成長や喜びが伝わってくるものばかりです。
ほんとうは賞をお出しするような「序列」をつけること自体、馴染まないんだけどな〜。
とはいえ、やはり「大賞」と名のつくものは不思議とインパクトあるものです。
それと去年、賞をお送りしたときの上司の方々の喜びようといったら…
「いやぁ、表彰なんて子どもの時以来ですけど、嬉しいものですねぇ」
なんて、言ってくださるんで。
心を鬼にして、今年も「選考」をさせていただきました。
9月27日〜10月3日、わたしどもNPOの社員・役員12名がWEBアンケートで投票。
この得点を参考に、10月8日、同志社大学の太田肇研究室で二次審査をしました。
以下、各事例の表彰ポイントをご紹介したいと思います。
【上司部門】
大賞1 annieさんの事例:
―ものづくり企業の研究開発という、日本経済の生き残りのカギを握るといってもいい分野。そこでの人材育成、世代交代について明るい道筋を示してくれる。
―「上司からの問いかけ、引き出し、行動の提案」⇒「部下の行動」⇒「手ごたえ」⇒「上司の承認」⇒「自信」⇒「再度の行動」⇒「さらなる手ごたえ、確信」と、非常にきれいなサイクルになっている。上司はこのように部下の行動促進に関わることができる。
―上司からの働きかけを受けて、活き活きと弾むように行動する部下の姿が爽やか。よい上司の下で働くと、仕事が楽しいということを示す典型的な事例。
大賞2 大里雄一さんの事例:
―入社10年目でやる気を見せない女性社員。実は、男女の役割が固定化しがちな中小企業でこういう人は多いのでは。それに辛抱強く上司が関わり、本人の当事者意識を引き出している。女性活用の好事例。
―「外部に出し、発言させる」は、「承認」の中でも言葉によらない行為の領域で、見過ごされがちだが、重要な働きをする。ここではそれが効果を挙げていることが評価された。
―大里さんからの親身な言葉がけの数々も重要な評価ポイント。
―最後、他社の社内活性化事例を学んできて「自社でも勉強会が必要です」というようになった。目を見張るような一人の人の変化。
―欲を言えば次の段階、この人を戦略的に戦力として活用する道を考えてほしい。
NPO法人企業内コーチ育成協会賞 「恥ずかしがり屋なもので…」さんの事例
―きちんとやりたい気持ちが空回りして混乱しやすく悩みやすい若い女性。口で言っても伝わらないことでメモを残した、というところに、女性上司の優しさときめ細かさがあふれている。
―「等身大のあなたでいい」は、短いけれども大切な存在承認。自分の存在そのものが受け入れられている、認められていると感じた部下が、混乱が減り優先順位をつけられるようになったとは素晴らしい。
―2人しかいない小さな職場。仕事量の調節も思うに任せないことも多いだろうが、ちょっとした思いやりの言葉が嬉しい。
審査委員長賞 永井博之さんの事例
―「目つきが悪く成績も悪く周囲から浮いている」と、いいところのなかった部下。普段は課長が見ているということだが、ここでは部長の永井さんが出ていって、まず「名前を呼び、挨拶する」ところからスタートした。これも重要な存在承認。
―思い切って営業同行してみたところ、良い所が発見できた。「思い切り」がカギになったかも。やはり、何が起きているかわからないとき、上司の方から歩み寄ってみることは大事。
―プラスの言葉がけをしたあと、それが口先だけではない証に、職場のみんなの前で紹介し、本人にも発言させている。これが効を奏した。いくつかのプラスの働きかけがうまく相乗効果を発揮している。
―「顔の肌ツヤが良くなった」などの観察も素晴らしい。モチベーションが上がってくると、確かに顔色が良くなる。これは、発言や行動が変わる前の段階の観察可能な変化。
【部下部門】
大賞 「万年青年教師」さんの事例
―苦悩の極みにある後輩教師に、他校の校長先生がわざわざ訪ねてきて激励していることが素晴らしい。
―あれもこれもやった、万策尽きた、という状態の人に、一切アドバイスを加えず、ただ「あなたはよくやっている」と「承認」に徹して励ましている。こういう場合に年長の人は、往々にしてアドバイスを与えたくなるもの。単なる「承認」に徹したところが、この校長先生の豊かな人生経験と温かい人柄を感じさせる。
―応募者はこの言葉を機に、辞めたいほどの苦悩から立ち直り、生徒と行動をともにし家庭訪問を繰り返した、とある。的確に人の心をつかんだ「承認」は、人の傷を癒し行動にまで駆り立てる力がある。
―校長先生はこの翌年亡くなった、とある。しみじみと、ある世代の人の持っていた人間力を感じさせる事例。
準大賞「ターニング・ポイント」さんの事例
―全国一厳しいと評判だったという名物部長さんの一言。一生に一度の褒め言葉かもしれないが、それだけに重みを感じさせる。
―「お前なら当然やな」ほかの人に聞こえないように静かに言う、というところがポイントかも。作為的ではなく、その人として精一杯の承認をされている。
―このあと応募者の人生を変えた、人材育成にシフトするきっかけになった一言。20年もその人の中に生きているところがすごい。
代表理事賞 岡田悦夫さんの事例
―「叱った」事例を承認と認めるべきかと審査では異論もあったが、一次審査で票こそ少ないものの熱いメッセージを集めた。
―相手の強さを信じての厳しい一言。応募者はこの一言をきっかけに仕事の姿勢が変わり、何事も丁寧にやり抜くようになったという。やはりこれも承認と認めるべきでは。
―叱れる若い管理者が少なくなったと言われる時代。34年前の事例をお手本にできるかどうかはわからないが、人の心に深い前向きな余韻を残す「叱り」もあるのだということを示す事例。
このほか
1962_tigerさんの事例は、私(正田)が個人的にとても賞をお出ししたかった事例でした。残念ながら選にもれてしまいましたが、応募者(上司)の熱い語りかけが、頼りない部下の心に沁み込むようすが伝わります。この事例の応募のあと、応募者は職場を替わられ(同じグループ内での異動)、この部下とも離れ離れになりましたが、そのときのメールのやりとり(未公開)も、とても心を打つものでした。
としくんさんの事例は、上司部下とも時間に追われてせっぱ詰まった状態の中で、上司が出した効果的なIメッセージ。これもとても賞をお出ししたかったのですが…、(「とっさのひとこと賞」など?)マネジメントは、答えのない難問の連続が普通のこと。「きれいな事例」とは言えませんが、それがむしろマネジメントらしいとも言えます。
「マネージャーの言葉は、どんな言葉でもマネジメントだ」と言ったのは、ミンツバーグでしたでしょうか…
N.Aさんの事例は、優秀な女性部下に対し感謝とともにさらなる要望を伝えたところ、期待以上の仕事をしてくれた、という事例。育成というよりは「交渉術」のようなものかもしれません。「承認」は、使いでのあるスキルです。応募者の謹厳な人柄を存じ上げているだけに、想像して笑みがうかびます。
橋尾ちさとさんの事例は、てきぱきした聡明な女性上司。すべてにおいて答えをもっていそうな方だけれど、「遠慮は無用」という言葉を繰り返すことによって、部下から意見を引き出しています。橋尾さんにチャレンジする勇気と自信を与えてくれたこの言葉、さすがですね!
神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp