ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

■安全文化評価調査、社員満足度
■「安全」「規律」と「個性」「自由闊達」





インタビュー登場人物

河本 宏子氏(全日本空輸株式会社 上席執行役員 客室本部長=当時。2014年4月より常務取締役執行役員、以下同じ) 
水田 美代子氏(同 客室本部 副本部長 兼 グループ品質推進部長)


ききて:

正田 佐与(NPO法人企業内コーチ育成協会 代表理事)
田村 聡太郎(カメラマン)



(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

■安全文化評価調査、社員満足度




正田:そうですか。ありがとうございます。

 こういった承認のマネジメントの下で離職率や社員満足度、顧客満足度というのは、他社様との比較というのはございますでしょうか。


河本:離職率は、年によっても社会環境によっても違います。就職が難しい時代などは離職率は低くなりますし、そういう意味では幅はあります。

 社員満足度、顧客満足度は、年に1、2回の調査を行っています。自分たちの健康診断ではないですけど、定期的に行い、特にそれを他社と比べるということはしていません。ただ、自分たちANAの強み、弱みは何なんだろうという分析は、他社を参考にしながらするときはあります。また、他社がなさっている顧客満足度の調査方法や他業種のやっていらっしゃる手法については、十分参考にさせていただいております。

 それに加えてもう1つ大事なのは、安全文化評価調査というものもやっております。安全文化をつくるためのアンケートですね。


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正田:安全文化評価調査。どういったものですか。どんな設問なんですか。


水田:主として安全に対して、どのような意識でやっているかですとか、安全を高めるために自分がどんなことを行っているかとかです。こうした問い掛けに対する答えの中に自分自身の意識だったり、会社全体の風土に関わるようなことが見えてくるということです。


正田:非常に興味深いです。自己評価でいらっしゃるんですよね。


水田:はい。かなりの量の設問ですけれども、結果としましては、経営に近い層と、中間管理職的な人と、一般職という、それぞれのくくりの中で、意識の違いがあるとか、安全に対するとらえ方が違うといったことがあります。例を申しますと、「すごくよくやっています」「こんなに制度を整えて安全を高めています」という意識が強い層がある一方、「そこまでではない」といった層もありますね。そういうことについて、違いがあるということはちゃんと認識しておかなければならないと思います。「できている、できている」と思っているのはやっぱり良くないです(笑)。そういう結果のフィードバックもしています。


河本:そういう調査をやっているのは、やっぱり自分たちがどういう状況にあるかということをきちんと把握して、次につなげていこうという手法として使っているということですね。経営管理指標にもしていますし。スコアを高めていこうというのは、私達も目標としては持っていますけれども、数値ありきというよりも、品質がきちんとしていれば、結果として数値はついてくるだろうという考え方ですね。


正田:そうなんですか。安全文化評価も、これもまたすごく興味深いです。設問が沢山あるとおっしゃいましたが、大体何十問ぐらいですか。


水田:50(問)を超えるぐらいあったのではないかと。


正田:それは多いですねー。


水田:疲れるぐらいあります(笑)。似たような設問を繰り返すというところがありますね。

社員満足度も少し似たような感じです。例えば上司との関係ですとか、そういうふうな設問もあったりしますので、そこからやっぱり意識の違いというのが見てとれたりします。


正田:例えばもしこのお1人のIM(インフライトマネージャー)のもとで、乗務員の方からわるい評価が続いたという場合は、どんなふうに。


水田:1人のIMの下に大体60人ぐらいの客室乗務員がいまして、そこまで細分化したデータは出てこないのですが、課の単位ですとか、部の単位ですと出てまいります。ただ、課や部によって違うというところはなく、管理職またはマネジメント層側の認識と若い人との認識の違いということがあるかもしれません。

 例えば「自由闊達な雰囲気」があるかないかということのとらえ方の違いが、長年指摘されてきているんですけれども、どうしてそういう違いが生じているのかなということを、私達なりに結果をみながら考えたりはしています。

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正田:そうですか。自由闊達がない、と。


水田:自由闊達にしていると私たちは思っているんですけど(笑)。


河本:「安全」に関わる部分では規程ですとか、ルールは結構決まっています。業務上そうしなければならない部分がありますので、やはり規程に縛られてしまうところはあります。自由な雰囲気でしようというものの、仕事柄、やはり指揮命令系統ははっきりしているんですね。そうでないと、脱出するときですとか、何か緊急事態が起こったときに、誰が誰に対して指示をするかですとか、誰の監督下に置かれるのかということは、ある意味ルールで決めておかないと、かえって混乱します。そういったことも考えますと、やむを得ない側面もあるのかな、と思いますし、それをあまりネガティブにとらえるのではなく、自分たちの業務の特性として見て行かないといけないのかなとも思います。


正田:やっぱり、規律を守っているお姿というのが私達にはかっこよく映るんですけど。


河本:規律を守ってきちんと仕事をしていることが、航空会社として、公共交通機関として、お客様の安心感につながっていくということは非常に大切だと思っています。それは整備士もそうですし、パイロットもそうですし、空港で働く者、すべてがそこを意識しているところはありますね。


正田:航空業界ということでいえば、例えばサウスウェスト航空さんとか、あるいは今時のLCCさんとかで、自由闊達な雰囲気とか、ポロシャツが制服で、ということをセールスポイントにするところもありますよね。


河本:そうですね。ただ、それらも安全を前提にした中でのことだと思います。個性は、ANAの中にも、LCCの中にもあり、それはどんどん出していけばいいと思います。型にはめるということではなく、ポリシーはしっかり明確にしておかなければならないという意味で、各社のマニュアルであり規程だと思っています。


正田:なるほど。

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((6)「ゆとり世代」の指導の仕方は に続く)


ANA流「安全」と「サービス」そして「承認」
―河本宏子・客室本部長にきく―

プロローグ―「承認大賞」から生まれたインタビュー

(1)CAは約6000人の巨大組織

(2)ほめる・認め合う・関心を持つは大切な価値観

(3)歴史――出発点は「激しい競争」と「CS」

(4)「小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に」

(5)「安全」と「自由闊達」――意識調査は企業の健康診断

(6)「ゆとり世代」の指導の仕方は 

エピローグ―「おせっかいCA」をつくりたい―「安全」と「承認」のタッグ

あとがき・石切にて





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