日本コーチ協会大会Coaching 2009のご報告第二弾。


 「2年以内に社内コーチを全社員の10%に高める」という目標を掲げた、外資系広告会社、?マッキャンエリクソンの事例をききました。


 「コーチングの費用対効果を論じている時期は過ぎた」と、分科会「コーチ型管理職の『質と量』がもたらす『組織における』変化」プレゼンターの木村純子氏。


 この事例には、専門のコーチング屋からみても組織でコーチングが効果を上げるために重要だと思える要素がそろっているので、あえて詳しくご紹介したいと思います。



 社員数約400名の同社では、2008年から09年にかけて、マネージャーとマネージャー候補者のほぼ半数に当たる計50名をコーチング研修にリクルート。


「人選にこだわった」こだわりの内容は、

・自ら進んで手を挙げた人材
・周囲への影響力の高いハイパフォーマー
  −独り勝ちタイプではなく、周囲へのケアやコミュニケーションができ、
   研修費用の組織への還元を意識している―
・研修後1年以内に辞めないことについてのコミットメント


などであります。



(ここで正田のつぶやき:
 「問題のある社員だからコーチング研修を受けさせよう」というご依頼もすくなくありませんが、

「ハイパフォーマーだから受講させる」

が、正解。

 当協会が「企業内コーチ育成」を団体名称にまで採用しているのも、
「企業内コーチ」になるポテンシャルのある人材をリクルートしたいからであります)


 
 受講者リクルートの手順は、まず社内文書で募集。その文面には、非常に高いハードルであることをあえて強調。応募者は役員面接を受け、目的意識やコミットメントを審査されます。


 その後12週間にわたり、週1回の電話会議(5人×1時間)によるコーチング研修。間に2度、360度評価を受けるという厳しいもの。


 さらに、5人1クラスの各クラス相互の交流ができるよう、間に全員参加のランチミーティングも挟みます。


 
 「ハイパフォーマーは多忙なのでは」という質問に、

「週に1時間電話会議で、という場合は気持ちの問題なんです」


 と、木村氏。出席率が85%以下の受講生には、費用を一部負担させるとも。


 そして、同社オリジナルの社内コーチに認定されますが、認定は単年度で、資格継続のためには再研修が義務づけられます。


 (正田のつぶやき:それ、いいなあ〜。確かにコーチングのスキルは武術のようなもので、継続トレーニングしていないと落ちていきます)


 
 …と、いうように、同社のコーチング研修と社内コーチ認定制度は「継続性」と「360度評価による客観性」が特徴。

(やはり、1日研修程度では一時的に良くなってすぐ落ちる、ということを繰り返した結果、こういう採用の仕方になったそうです)



 1人当たりの研修費用は40〜50万円とかで、普通の企業研修の集合研修1日当たりの額に相当します。


 さすが東京、さすが外資系(^o^)


 しかし、教育研修にはここまででなくても、ある程度の投資はしないと、生き残れません。これは実感。


 日本の、そして関西の経済回復の歩みは遅々として…、

 みなまで言うな。





 なおこれだけ費用と時間と手間をかけた研修の効果は、


■個人(管理職)のコミュニケーションスキル
 ―上昇(部下・周囲の評価)

■個人活性度
 −ロイヤリティ、貢献感を中心にほぼすべての項目が上昇
 内容:ロイヤリティ、自律積極性、完遂責任力、創造性、自己効力感、成長感、適応力

■チーム活性度
 −ほぼ全項目で上昇
 内容:雰囲気力、相互作用度、ナレッジシェア度、相互サポート度

■組織活性度
 −ほぼ全項目で上昇、特に組織横断での議論・協力・人材育成風土で大きく向上
 内容:組織横断的議論活性度、組織横断的業務協力度、イノベーション風土、マネージャー自己組織度、人材育成風土


 と、多くの項目で上昇。

 一方で、同社も他の例にもれず、この期間業務量の増加や業績悪化によるインセンティブカットがあったため、

「モチベーション」「担当業務配分納得度」などの項目が低下しました。




 1つ前の日記(大うつ時代を働き続けるコツ)と照らし合わせると、
コーチングをやっていたからこの程度で済んだ、ともいえるかも?


 (「お給料は減ったけど人間関係は良くなって心を合わせて仕事できるので居心地はまあ良好…」)





神戸のコーチング講座 NPO法人企業内コーチ育成協会
http://c-c-a.jp